樺沢のシカゴ日記
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Vol.1  「家に電話がついた

 やっと、シカゴ日記を書く余裕が出てきた。別に暇がなかったわけではないが、家に電話がなかった、すなわちネットとつながっていなかったわけで、職場のネットからHP更新というのも、なかなか新参者としてたは気の引けるところである。ということで、ネット環境も整ったところで、シカゴ日記を始動させる。

 ようやく、家に電話が付いた。アメリカに来て実に39日目のことである。実にうれしい。
 たかが電話が付いたくらいで、そんなにうれしいのかって? それは、日本にいるから言えることであり、アメリカでは外国人が新しく電話をつけるというのは、極めて大変なのである。これは、不法入国者をアメリカで生活させないための陰謀かと思うほど、困難で多くのステップを要した。さて、ひの長くて険しい道のりをここに紹介しよう。
 4月26日にシカゴに到着。一週間でアパートを見つけて、5月3日(月)から仕事を開始した。翌日火曜日に、職場のインターネットで電話サービスについて調べる。私のアパートはSBCという会社に依頼することは、アパートの管理人から聞いていた。とりあえず、SBCのホームページを見てみる。
 なんと、インターネット上からも新サービスの受付ができるという。ラッキー。そのページに行ってみて、詳しく説明を読んでみる。すると、ソーシャル・セキュリティ・ナンバー(社会保障番号)がない人は、電話サービスは受けられないと書いてある。ソーシャル・セキュリティ・ナンバーの獲得に関しても一悶着あるのだが、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーの獲得までは、あと2〜3週間はかかりそうなのだ。それまで、電話なし(すなわち、インターネットもなし)の生活をするしかないということとか。トホホ。
 翌日水曜日に、同僚が「生活の方は順調か? 何か困っていることはないか?」と心配して聞いてくれたので、これは渡りに船と、電話のことを聞いてみた。「ソーシャル・セキュリティ・ナンバーがないと、電話回線を新しく引けないらしいのだが・・・」。「そんなことはない。自分は確か、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーをとる前に、電話をつけたはずだ」という。変わりに電話をかけて問合せてくれるという。これはラッキーだ。
 インターネットのみならず、電話で直接サービスを依頼する方法もある。しかし、アメリカでの生活ガイドによると、新規に電話回線を引くサービスを依頼するのには、いろいろな込み入った質問に答えなくてはならず、かなりの英語力を要すると書かれている。渡米前に、留学経験のある友人に「電話はどうしたのか?」とたずねたところ、ネイティブ・スピーカーの同僚に頼んだと言っていた。私の稚拙な英語力では、電話会社に電話しても、全く理解できないだろう。
 さて、手元に電話会社の電話番号を持っていたので、その場ですぐに電話をかけてもらった。オペレターといくつかやりとりをしていたが、私の場合はソーシャル・セキュリティ・ナンバーがないので、代わりに身分を証明するものが二種類必要だという。パスポートと国際免許証のコピーを、FAXで送った。FAXで送ったら、折り返し連絡しろというので、また同僚に電話をかけてもらった。FAXは受領したので、二日後には電話番号も決まり、電話もつながるという。金曜の午後にカスタマー・サービスに電話して新電話番号を聞け、という話だった。「なんだ、明後日には電話がつくのか。二日間で電話が付くとは簡単なものだなあ」。この後、長い道のりが延々と続くことは、この時は想像も出来ない。
 さて、金曜日になったので、電話会社のカスタマー・サービスに電話してみる。今度は、自分でかける。今までの経過を簡単に説明するが、全く要領を得ない。何と、申し込みがされていないという。もう一度最初から申し込みをしろ、というのだ。「それは、おかしいから良く調べろ。新しい電話番号を今日中に教えろ」と強気の言い方で出てみる。すると、コンピューターで少し調べたようで、了解したと言う。新しい電話番号を教えてくれた。やった、新ダイヤルをゲットした。同僚に新しい番号を教えたりして、得意になる。
 しかし、電話はまだない。電話の購入にもひと悶着あったが、分かりづらくなるので、後日暇があれば書こう。
 さて家に帰って、コンピューターに電話をつないで、ダイヤルアップ接続しようとするが、全くうんともすんとも言わない。エラーメッセージを調べたところ、トーン音が全く出ていないらしい。つまり、回線がつながっていないのだ。チキショー。
 すぐに電話をして思いっきり苦情を言いたいところだが、その語学力はまだ私にはない。そもそも電話がつながっていないのだから、すぐに電話することも出来ないし。
 前回電話した時に、一番最初に機械の音声で「こちらは、SBCです。問い合わせはインターネットでも承っています」と言っていた。電話による依頼が全く受理されていなかった、という事実を受けて、今度はインターネットで問い合わせのメールを書いてみる。何分かして、すぐに返事が来たので驚く。「そのお問い合わせに関しては、至急調査の上、折り返しご連絡いたします」と。いいじゃないの。多分、自動的に返信しているのだろうが。
 二日後にメールが来た。それには次のように書いてある。「我々は現在、インターネットでたくさんの問い合わせを受けており、その処理に大変時間がかかっております。大変申し訳ありませんが、カスタマーセンター番号XXX-XXX-XXXXまで、電話にてお問い合わせください」。
 この返事が返ってくるまで、どーして二日もかかる。これがアメリカのタライ回し体質だな。いいかげんにしろ。メールで解決しないのなら、最初から「メールで問い合わせろ」とか言うなよ。やっぱり、電話かけるしかないのか? でも、また受理しないんだろう。これを延々と繰り返すのか?
 アメリカ市民に対する全ての新電話サービスが、こんな不手際だらけで進むわけではないだろう。私の場合は、ソーシャル・セキュリティ・ナンバーがないから、非定型的な手続きとなってしまう、だから、こうした不手際の原因となるはずだ。私は論理的にそう帰結した。
 来週には、ソーシャル・セキリティ・ナンバーがゲットできるばずだ。そう思い、数日間、待つことにした。そうして、ようやくソーシャル・セキュリティ・ナンバーがゲットした。これで私も、晴れてアメリカ居住者である。おそらく・・・。
 ネットからソーシャル・セキュリティ・ナンバーを入力すると、SBCのホームページの新回線申し込みフォームにたどり着くことが出来た。6、7ページに渡って、市内通話はどのプランにするか? 長距離通話は? 国際通話は? といった登録を繰り返す。変に読み違えて、高いプランにしては困る。ジックリと読んでいたら、一時間くらいかった。新しい電話番号はどれにしますか、と5個の中から選ぶページに来た。「こりゃ、いよいよ本物だぞ」覚えやすいナンバーをゲット。最後のページまでようやく到達して、サブミット終了。これで今度こそ、電話がつくだろう。
 二日ほどして、またメールが来た。「あなたの場合は、アメリカ永住者ではないのでデポジット(補償金)が必要となります。詳しくはカスタマーセンター番号XXX-XXX-XXXXまで、電話にてお問い合わせください」。やっぱり、カスタマー・サービスかよ。
 今まで、電話から逃げ続けていた私だが、カスタマー・サービスへ電話することなしでは、回線はつなげてくれないらしい。ようやく、覚悟を決めた。カスタマー・サービスに電話だ。
 何とかエオペレーターの言っていることはわかった。私の場合は、アメリカ永住者ではないので、身分の確認が必要であるという。パスポートとソーシャルセキュリティカードのコピーをFAXで送れという。またかよ。「もう送ったよ」と言いたいところだが、最初の話をぶりかえすと、話が余計複雑になる。FAXで送ったら折り返し電話しろという。
 10分以内にFAXで送り、早速電話をしてみる。当然、別なオペレーターが出る。一から全部説明しなおしだ。同じことを何度も言っているので、喋りが流暢になってきた。こりゃ、良い英語の練習になる。一通り聞いてオペレーターは最後に言った。「FAXで送信したデータがコンピューターの記録に反映されるまでは、2営業日かかります。2日後に改めて、電話してください」、と。
 それなら最初から言えよ。「FAXを送ったら、2日後にお電話ください」と言ってくれれば済むことじゃないか。もー、いい加減、嫌になってきた。とはいっても、家でインターネットができないと、不便でしょうがない。途中で止めることも出来ない。
 これを読んでいて、読者も嫌になってきただろう。書いている私も嫌になってきた。でも、もう少し続く。この話には、誇張は全くない。全てが事実。ノンフィクションであることをお断りしておく。
 2日後に、またまたカスタマー・サービスに電話だ。最初から全部説明しなおし。そうすると、今度はFAXが届いていない、と言いやがる。こっちは、何回FAXしていると思ってるんだ。こうなったら、百回でも二百回でもFAXしてやるか。すぐにFAXして、二日後にまた電話。
今度は、FAXは受け取ったという。ようやく、ちょっとだけ進歩したようだ。デポジットもいらいないという。物分り、いいじゃないの。
「それでは、まず市内通話ですがどのプランにしますか?」 おいおい、ちょっと待て。それは、インターネットで入力したぞ。
「それについては、インターネットから申し込みを済ませましたが」
「データに反映されていませんので、もう一度お答えください」
 なぜ、データに反映されていない? 顧客データは一体どうなっているのだ? 
 しょうがないから、オペレーターの質問に答えて、料金プランについて、一つ一つセレクトしていく。携帯電話のプランみたいなもので、えらく複雑だ。インターネットで予備知識が入っていたので、何とか理解できた。結局、30分ほどやりとりが続き、「あなたの新しいで電話番号はXXX-XXXXです」と言う。
「こないだインターネットで選んだ番号は?」
「それは、無効です」
 インターネットのオーダーは、全く意味がなかった。
 さて、終わったのかなと思ったら、「DSL接続はどうしますか?」とセールストークに入ってきた。とりあえずはダイヤルアップ接続でしのいで、DSL接続は後からネットで注文しようと思っていたのだ。しかし、ネット注文が全くあてにならないことを痛感。つい「Yes, please.」と言ってしまった。DSL接続についての説明もまた複雑だったが、DSL接続もオーダー完了した。
 最後に、「電話回線は今日から1週間後の6月2日、DSLは4週間後の6月24日につながります」とのこと。まだ、1週間もかかるのか。ここまで来ても、かなり疑心暗鬼。
 6月2日。仕事から帰ってきて、新しい電話につないでみる。「ツー」という発信音が聞こえる。やった、無事回線はつながった。感無量だ。ダイヤルアップ接続でインターネットにつなげる。快適な速さ。というか、えらく早い。これなら、DSL接続必要ないかも。
 とりあえず、私は今満足している。初めてのオーダーから、つながるまでに実に30日間、電話での総問合せ回数8回、ネットでの問合せ2回、FAX送信回数3回。のべ13回の問合せの末、回線はつながった。まるで大作映画のようだ。
 アメリカでは、手続きとか申請というのは、万事こんな調子だ。話には聞いていた。留学経験者からの話では、必ず出てくる。私も知識としては知っていたが、ここまでひどいとは私の想像をはるかに超えていた。
 アメリカ恐るべし。もしアメリカが、こうした手続きで日本なみの対応ができていたら、アメリカのGNPは今の二倍くらいになっているかもしれない。そのくらい無駄が多いのがアメリカだ。
 アメリカでは、手続きとか申請というのは、万事こんな調子だ。話には聞いていた。留学経験者からの話では、必ず出てくる。私も知識としては知っていたが、ここまでひどいとは私の想像をはるかに超えていた。
 アメリカ恐るべし。もしアメリカが、こうした手続きで日本なみの対応ができていたら、アメリカのGNPは今の二倍くらいになっているかもしれない。そのくらい無駄が多いのがアメリカだ。

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証拠写真
無事設置された我家の電話

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