樺沢のシカゴ日記
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「テイスト・オブ・シカゴのお味は・・・」
 シカゴの代表的なレストランが約50軒集まり、縁日の出店のように屋外で店を出す。それが、「テイスト・オブ・シカゴ」である。これが10日間も続く。私のために開いてくくれるような祭りだ。行かないわけには行かない。
 ということで、開会から二日目の土曜日に会場へと向かう。
 さ電車を降りると、すでにそこにいる人の量が明らかに違う。「ブルース・フェスティバル」の帰りよりも多い人が歩いている。それも同じ方向に向かって。当然、「テイスト・オブ・シカゴ」の会場、グラント・パークに向かっている。凄い人だ。いつもだと、このループ地区は、札幌の北24条くらいの人出しかない閑散としたものだが、この日は渋谷の日曜日くらいの混み具合である。会場に着くと、また人の多さに圧倒される。日本のお祭りの縁日なみの混みよう。牛歩でないと進めない。こんなにシカゴに人がいたのか、という感じ。
 それにしても、「ブルース・フェスティバル」が一番人が出るとは、嘘を書きやがって。どうみても、「ブルース・フェスティバル」の倍以上の人は出ている。何万人いるのか見当もつかない。
 アルメカ人が一番好きなもの。それは、ブルースでも音楽でもない。食い物だ。
 それを、確信した。
 ちなみに、後からニュースで知ったところ、例年このイベントへの参加者は、のべ300万人。私が行った日の人出は10万人だそうだ。
 10万人は、すごいぞ。だって、シカゴの人口は290万人なんだから。
 50軒のレストラン。頭で考えるとたいしたことないが、実際に並んでみると壮観である。というか、この混雑の中、ぶらりと歩いて各店舗を眺めるだけでも1時間以上はかかる。
 さて、どこから食べ始めようかと思った瞬間、「チーズケーキのバースデイパーティーに行きたい」と家内が言いだした。もう腹ペコなんだから、一、二品食べてからでも良いだろう。13時になるというのに朝から何も食べていないのだ。しかし、このチーズケーキのイベントなるもの、13時丁度から始まるとプログラムに書いてある。チーズケーキは嫌いじゃないから、とりあえず行ってみることにする。
 チーズケーキ・イベントの会場に向かう。その途中に、300メートル以上の凄い行列が出来ていた。 
 何だか、嫌な予感がする(「スター・ウォーズ」によく出てくるセリフ)。 
 その行列は、どうみてもチーズケーキ・イベントの会場に向かって伸びているのだ。とりあえず、先頭の所まで行ってみる。凄い人だかりができている。「ビッグ・チーズケーキ・・・なんとかかんとか」と、テーブルの前で司会の男がマイクで説明している。テレビ局のカメラが4〜5台も来ている。なにやら、テーブルを撮影しているが、チーズケーキはどこにもない。
 待てよ、このテーブル。
 直径2メートル、高さ1メートルほどの円卓のサイズ。しかし、側面は茶色で、上面は赤い。
 なんと、これがチーズケーキだ!!
 超特大のチーズケーキ。バースデイパーテイというのは、このお店の24周年記念のイベントという意味らしい。この特大チーズケーキをこれから、無料で配るというのだ。なるほど。

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かなりの混雑

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延々と続く行列
その先には・・・

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真ん中にある茶色い
テーブルが・・・

 日本でもよくある。地域イベントで何百人前の特大鍋を作ったり、ギネスに挑戦とかいうやつ。その類だ。現時点で、行列は見えないほど続いている(多分300メートル以上)。1000人以上は行列していると思う。この行列に並ぶと、一体何分かかるというのだ。たった1個のチーズケーキのために。バカな奴がたくさんいるもんだ。
 と思った瞬間に家内は言った。
 「私たちも、並ばない?」
 バカは意外と身近なところにいた。
 俺はもう腹がへって死にそうなのだ。周りにはおいしそうな店が何軒も軒を連ねているというのに・・・。なぜ今から何十分も並ばなくてはいけないのだ。
 断固として私は並ばないぞ。
 しかし、家内は決意を変えない。意外と頑固者だ。
 さて、その間にも私の観察力は、状況を観察し続けている。すでにチーズケーキの配布は開始された。これだけの行列。
 一人一個というのが常識だと思うのだが、一人で二つ、三つ取っている、ずうずうしおばさんが時々いる。
 これだ!!
 私の分のチーズケーキもゲットするように家内に頼み、私は一人で会場内の探索へと向かった。なんともひどい夫である。
 
 まずは、「Freied Dough」という揚げパンを買ってみる。
「ワン・フライド・ダフ・ブリーズ」 
 店員は、何かいぶかしげな表情をしたが、たくさんのダフが積まれているちところから、一個をとって渡される。
 おい、揚げたたてをよこせ。そんな、とりおきしたものがうまいはずないじゃないか。
 と、文句を言えるはずもなく、シナモンとシュガーを自分でふって、黙って食べる。
 「うまい」それも、超熱々である。

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Freied Dough

 揚げてから1分と経っていない。客の量が凄い。どの店も、飛ぶように売れている。何個も揚げたものが積まれていたが、次々と売れていくので、そんなに時間が立っていないのだ。
 単なる揚げパンである。何も入っていない。しかし、妙にうまい。味も、小麦の風味にシナモンと砂糖の味だけ。しかし、この単純さがたまらない。うますぎる。空腹だったせいもあるのか、たちまち2/3を食べつくす。家内の分も残しておかないと怒られる。しょうがなく、あとは我慢する。しかし、これはペロリと全部食べたいくらいだ。
 でも「ダフ」って一体何だ? こんな食べ物が存在したか? 
 一応、勉強熱心な私は帰ってから辞書を調べてみる。
 「Dough」の意味は・・・・・・「パン生地」だ!!
「パン生地」と言えば発音は「ドゥ」じゃないか。
バカだ。
言われてみれば、「パン生地」のことを「ドゥ」という。そんなことは、知っていた。しかし、なせが「ダフ」と言ってしまった。恥ずかしい。「Freied Dough」とは、「パン生地を揚げたもの」という意味だったのか・・・。ちなみに、ドーナッツのつづりは、「Doughnut」で、「Dough」と関係がある。
 ドウりで、ドーナッツと似ていると思った。
 まあ、それはいい。
 だいたい、こんな縁日のような屋台というかテントで作られるものが、おいしいはずがないじゃないか。という先入観があった。日本の屋台がそうだ。しかし、ここに参加している各店は、相当の意気込みで臨んでいる。自分の商品が何千人もの人の口に入る。絶好の宣伝チャンスだ。他のどの店も中途半端なものは出していなかった。このダフ、いやドゥの店は、また後日改めて行きたいなあ、と感じた。
 さて、15分後に会おうと家内と約束していたので、チーズケーキ配布場にもどると、もうチーズケーキをゲットしていた。量も少なく、形も崩れていている。ひどいもんだ。こんなもの、千人分を一度に作ってうまいはずがないじゃないか? と、人に並ばせておいて、偉そうな私。
 まあ、一応、味見しやるか・・・。
 うまい。うまいぞ!!

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まずそうなチーズケーキ
しかし・・・

 アメリカのデザートは、時として死ぬほど甘いのが出てきて非常に危険なのだが、このチーズケーキは甘さも適当で、なかなかのものだ。これには$4くらい払う価値は十分にある。
 やはり、このチーズケーキ屋。この特大チーズケーキに社運をかけていたようだ。もし、このチーズケーキがまずかったら、行列した千人以上の人は、二度とこの店でチーズケーキを食べることはないだろう。逆に、おいしければ、凄い宣伝効果となる。この味は、店で出しているのにかなり近いレベルのものであることは、容易に想像がつく。シカゴのパティシエも、なかなかやるものだ。
 さて、私の空腹がこんなもので収まるはずかない。探索を続ける。50軒全て見てから美味しそうな店をセレクトするというやり方では、何時間かかるかわからない。このイベントは1週間以上は続くので、とりあえず今日は半分だけ回ることにした。
 いろんな人が、見かけない食べ物を持っている。実に美味しそうだ。本当、みんな美味しそうに食べている。幸せそうだ。アメリカ人はみんな、食べ物が好きなんだなあ。そう思う。

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ロブスターを50個くらい一度に焼いている。壮観である

 それにしても、この会場は、非常に危険だ。
 日曜日の原宿なみに混んでいる。さらに、四人に一人は手に食べ物を持って、食べながら歩いているのだ。ぶつかったら、どうなるの? よくぶつからないと、不思議だ。これも、パーソナルスペースを余分にとっているせいか・・・しかし、危険すぎる。
 あっ、危ない少年がいた。6歳くらいの小さな黒人の少年だ。七色もの色鮮やかなアイスが大盛でのったレインボーアイスを、実にうまそうに食べている。もう、食べるのに夢中だ。
 そのせいか、コーンの角度が45度を越えている!!
  さらに、水平に近づいているぞ。
 アイスが落ちるぞ、落ちるぞ!!  
 アイスを落として泣き出すのか?
 とりあえず、まだ食べ始めたばかりだったので、アイスは溶けておらず、崩落には至らなかった。しかし、少年の幸福が絶望へと塗りかえられる瞬間は近いだろう。
 こんな「45度アイスの子供」とか、食べ物に夢中になった老若男女が、この大混雑の中を歩いているのだから、その危険ぶりはご理解いただけるだろう。
 おっと、カレーメニューの登場だ。ここに来て、まだカレーを食うというのか? 
 いや、「テイスト・オブ・シカゴ」でカレーを食わずして、樺沢紫苑と言えるのか?
 しかし、どうもこの店インド料理店は、食指が動かない。私の直感が反応しないのだ。むしろ、その隣の店に、何かを感じた。
 メニューに「ロティ・カナイ」と書かれている。これは良さそうだ。
 小さく切ったロティ(ナンよりもミッチリと密度があり、チャパティよりもふわっとしたパン)に、カレーがかかっている。うまい。適度なスパイス感と甘みが共存している。して、ロティも絶品だ。あっといまに、半分以上が胃に吸い込まれている。日本の給食カレーに近いものを感じた。特有の甘さのせいだろう。

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ロティ・カナイ

 何か、なつかしい味だ。この店のレベルは、かなりのものだ。一度、本店を訪ねねばなるまい。と思い、店名をチェックする。「ペナン」と書かれていた。インド料理の店ではなく、インドネシア料理の店であった。確かに、「Fried banana(揚げバナナ)」というのもメニューにある。
 これは、インドネシアのカレーなのか・・・。初体験だ。そういえば、「マジック・スパイス」の原型はインドネシアのスープ、ソトアヤムだった。是非、このインドネシア料理の店に行きたくなった。ソトアヤムにでも挑戦してみようか。
 まだまだ、食べられるぞ。さて、次のメニュー。
「マスタード・キャットフィッシュ・フライ」に挑戦だ。「マスタード」という言葉に引かれた。キャットフィッシュとは鯰のこと。ケイジャン料理にはよく使われる魚だ。なるほど、食べてなぜ「マスタード」と一緒に調理するのかがわかった。キャット・フィッシュの泥臭さをマスキングするためのマスタードなのだ。フライの衣にも結構スパイスがついている。しかし、キャット・フィッシュの泥臭さが残っていて、ちょっと食べづらかった。はずれだ。

catfish.jpg (20092 bytes)キャットフィッシュ・フライ

 さて、家内はデザートへの探究心が旺盛である。似たもの夫婦だ。知らないうちに、ブラウニー・サンデーを食べている。一口もらう。
 アイスクリーム部分はおいしい。しかし、ブラウニーの部分が甘すぎる。アイスと一緒に食べてると、多少は中和されるが、ちょっと甘すぎる。
 さて、ようやく空腹も収まったので休憩だ。

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激甘サンデー

 ディズニーのソングライターの人が、子供向けの音楽ショーをやっているというので、小ステージの方に見に行く。しかし、観客が10人くらいしかいない。寂しすぎる。そして、真剣に聞いている人は誰もいない。悲しすぎる。かわいそうなのでしばらく聞いていたが、ディズニーの曲は一向に登場しない。著作権の関係だろうか。つまらないので、我々も10分ほどでその場を去る。
 観覧車とウォーター・スライダーといった、乗り物もある。当然、普段のグラント・パークにはない。特別に設置したものだ。
 観覧車でも乗ろうかと思い、観覧車を見上げると、観覧車が猛烈なスピードで回っている。1回転するのに1分かかっていない。40-50秒で一回転しているそ!!  観覧車というよりは、円形軌道を動くジェットコースターのようなものだ。自然落下ではないものの、重力に従うかのような凄いスピードで回っているのだ。普通観覧車というものは、10分くらいかけてゆっくりと一周するものと思ったが、この高速観覧車は高速回転を10回転ほどして終了である。さすがアメリカだ。観覧車ひとつとっても、ダイナミックだ。
 おそろしいので、私はパスする。
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危険な観覧車
 さらに、しばらく歩いていると「ウォーター・メロン・ イタリアン・アイス」というのがあった。イタリアン・アイスとは、どぎつい色のついたカキ氷のことだ。
 家内はまた、これも食べたいという。よく、食うな。
 たしかにおいしそうなので、これも購入。
 しかし、赤の色彩が強すぎる。種として、丸くて小さなチョコレートが入っていた。おっと、まるでスイカバーじゃないか。味もスイカバーをカキ氷状にしたと思っていただければよい。まあ、ふつうにおいしい食べ物だ。しかし、相当の着色料が入っているだろう。
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ウォーター・メロン・イタリアン・アイス
 さて、いろいろと食べた。約30ドル分のチケットがたちまち我々の胃の中に消失した。
 このイベントは樺沢向きだ。まだ、8日ほどやっているので、もう2回くらいは来たいところだ。
 今回の「シカゴ日記」には、オチはない。この日は、満足な状態で1日を終えることが出来たから。
 しかし、おちがないと言えば、「45度アイスの子供」のアイスは、最後までおちなかったのか? それだけが、気がかりである。
(2004年6月26日)
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