樺沢のシカゴ日記 |
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「樺沢、ジーザスおばさんを見る 」 シカゴはイベントが多い。毎週のように、大きなイベントが開催される。シカゴ市が主催するイベントだけで10以上もある。「ゴスペル・フェスティバル」「ブルース・フェスティバル」「ジャズ・フェスティバル」等、音楽のイベントが多い。 |
「ファネル・ケーキ・アラモード」と言うらしい。真似して、それを注文。おー、結構いけるな。でも、これと似た食べものをどこかで食べた気がする。デジャ・ヴューか。いや、違う。インド・フェスティバルで食べた、サモサ・シズラーと妙に似ている。 そういえば、悪夢を思い出した。「突発的油噴出ジャケット汚し事件」だ。同じ轍はふむまい。しかし、このパンケーキは十分に油がきれており、噴出の危険はなさそうだ。いやいや、そういう油断した時ほど危険なのだ。 しかし、今回は大丈夫であった。ちなみに、インドフェスから帰宅してすぐに、石鹸でジャケットを洗ったところ、なんと油汚れが跡形もなくとれたのだ。クリーニングに出すという危機を見事に回避でき、ハッピーな一日で終わったふことを追記しておく。 パンケーキを食べながら、17時からのステージを見るための場所とりへと向かう。 |
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それにしても、会場に来ている人の9割は黒人である。ゴスペルは黒人の文化であることは承知であるが、シカゴ市主催の「ゴスペル・フェスティバル」という市民の祭りなのであるから、白人も見に来るのかと思いきや、ほとんど来ていないのが現実である。 人種間の壁、文化の壁というのは意外に厚いものだと感じた。 ステージの直近は、コンサート会場のようにイス席になっている。後ろの芝生では、みなキャンプ用のイスか敷物を持参で、鑑賞に来ている。クーラーに飲み物食べ物持参の人も少なくない。皆、慣れたものだ。昼12時から夜21時過ぎまでずっとやっている。みんな、長期戦の構えで聞きに来ているのだ。 会場にはかなりの人が来ている。多分一万人以上。しかし、バカみたいに混んだ感じはしない。日本で同じイベントを無料でやったら、何万人集まるだろうか? 大変なパニックになることは間違いない。意外とアメリカ人は冷めているのか? 敷物で席をとっているのは、日本の花見のようだが、妙に隣の人との間に余裕があるのだ。コンサートだというのに、動けないほどびっしり詰めて座るわけでもない。この辺のスペースのとり方が、アメリカ的だなと思った。 一生懸命音楽を聴いている人。一緒に歌いだす人。踊りだす人。ひたすら、食べ続ける人。昼寝をしている人。楽しみ方は、人それぞれである。アメリカ人は熱狂的ですごい盛上がりになるかと思っていたが、必ずしもそうではない。真剣にミュージックを楽しもうという人は、前のイス席に陣取っているらしく、芝生の人たちはのんびりとフェスティバル全体を楽しむというスタンスだ。 アメリカ人は、人それぞれだ さて、いよいよ太った黒人女性のシンガーが登場した。曲もいかにもゴスペルっぽいのになって、会場は大いに沸く。皆が知っている歌らしく、シンガーの声よりも、客の声の方がでかいくらいだ。 私のすぐ後ろの席の女性が、興奮状態になった。 「ジーザス、ハレルーヤ。ジーザス、ハレルーヤ。」 連呼しながら、大きな動作でダンスを続ける。そのおばさんの隣の人たちは、先ほど帰ったようで、混雑した人の中でポカリと芝生の空間が空いている。まるで、「ジーザス、ハレルーヤ」おばさんのステージでもあるかのように。そのせいもあって、彼女のダンスはやたらと目立つ。衆人はそれを見守る。曲の盛り上がりとともに、「ジーザス、ハレルーヤ」の声がでかくなっている。大丈夫か、このおばさん。 曲はエンディングへと向かう。 しかし、「ジーザス、ハレルーヤ」おばさんのダンスは踊らない。 そして、曲は終わった。 何とおばさんは、「ジーザス、ハレルーヤ」を連呼しながら、さらに踊り続けている。 「曲があってもなくても、同じかよ」 思わず突っ込みを入れたくなる。ほとんど曲など聴いておらず、自分の世界に入ってしまっている。そして1分ほどして、ようやく我に帰った。 さて、しばしのインターバルの後、シンガーが次の曲を歌いだした。 そういえば、後ろが静かだ。おかしい。さっきと違う。 後ろを振り向いてみると、「ジーザス、ハレルーヤ」おばさんは、キヤンプ用のイスにドップリと腰掛けていた。悠然とうちわで顔を扇ぎながらくつろいでいたのだ。 「おい、一曲だけかよ」 またもや、心の中で突っ込みを入れる。先ほど激しく踊り過ぎたようで、かなり疲労したようだ。すっかり、休憩タイムに入っていた。まあ、楽しみ方は人それぞれ。いいじゃないか。とは思う。 音楽について疎い私も、この雰囲気は大いに楽しめた。しかし、音楽よりも人物観察が楽しかったりする。まあ、これも私なりの楽しみ方だ。来週は、「ブルース・フェスティバル」だ。今度は、敷物持参でいくか。まさか、「ジーザス、ハレルーヤ」おばさん、来週も来てないよな。(2004年6月15日) |
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