カレー南蛮から考えるスープカレーの必要条件
パセオで軽く夕食を済まそうと、ブラリと店を物色。いつもカレーばかりで、最近蕎麦を食べていないと思い「八雲」に入る。
さて何にしようか。最初は外も寒かったということもあり、「鴨南蛮」で温まろうかと思っていた。しかし、ディスプレイにあった、あるメニューが頭から離れない。どうしよう、どうしよう。店員さんが来た。
「カレー南蛮お願いします」
ああ、言っちゃった。結局、いつものようにカレーである。
とは言え、「カレー南蛮」という一品は、最近ずっと食べていなかった。というか、今年の冬は、「カレーうどん」は何回か食べたが、「カレー南蛮」は一度も食べていなかったではないか。
ちなみにご存知とは思うが、「カレー南蛮」の「南蛮」とは「長ネギ」のことである。唐辛子のことではない。江戸時代の頃、南蛮人がネギをよく食べていたことから、ネギを南蛮と呼ぶようになったそうだ。出前蕎麦屋のM店では「カレー南蛮」を注文すると、唐辛子の小袋がついてくるが、それはご愛嬌ということで…。
さて、カレーが運ばれて来る。アツアツである。フーフーしないと食べられない。当然、ドンブリもアツアツ。そんなに辛いわけでもないのに、額からどっと汗が吹き出る。これぞ汁物の醍醐味。さて、蕎麦を食べ終わり、汁が少し残ってしまったので、一気に飲み干そうとドンブリに口をつけると、まだ汁は熱く、飲み干せる温度ではなかった。
「八雲」の蕎麦は、すごくおいしいというわけではないが、はずれのないスタンダードなうまさがある。ある種の標準といおうか。この「カレー南蛮」を食べて改めて確認する。ダシが凄くうまいわけでもなく、カレーに特徴があるわけではないのだが、食べた後に極めて高い満足感に支配される。それは、やるべきことを抜かりなくやっているからに他ならない。温かい蕎麦のやるべきこととは、ドンブリをきちんと温めて、汁もアツアツの状態で、客に提供するということだ。
これを読んで当たり前だろうと多くの読者は思うのだろうが、この当たり前のことが出来ていないスープカレー屋が結構ある。
同じスパイスの量でも、スープをアツアツにすればスパイス感が20-30%はアップする。逆に、たくさんのスパイスを使っても、ぬるいとちっともスパイスが香らないし、辛さも伝わらない。どんなにおいしいスープカレーも冷めたらおいしさは半減する。スープをとることには、何時間もかけて多大な苦労をいとわないのに、最後の1分で手を抜いただけで、全てがぶちこわしである。逆にまずいスープでもアツアツで提供すれば、それなりにおいしく感じられるだろうが、味レベルの低いカレー店でアツアツカレーを提供しているという店は見たことがない。
スープカレーを温かい蕎麦と同じくらいの温度で出して欲しい。無理難題を言っているわけではないとは思うのだが…。 (2004年3月2日) |