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激辛カレー批評 |
ザイオン・ロックス ZION LOCKS 札幌市中央区南1条西9丁目 |
開店当初から何度も足繁く通っているが、行くたびにメニューや味が少しずつ変わっているところが、おもしろい。少しでも良いものに変えていこうという、店主の意気込みが伝わってくる。 開店して初めて食べたときは、スープのうまみは確かなものがあったが、パンチがないというか、ピンぼけというか、スパイスが弱いという印象はぬぐいえなかった。うまみ的には十分あるのだが、それが十分に生かされていないという点で、非常に残念であったのだが、通うたびに味や具材に少しずつ改変が加えられていった。 前回訪れたのは、半年以上前になるが、その時はスパイスを意識しすぎたせいか、「デリー」のカレーと似たような味になってしまい、店としての個性がなくなってしまっていたので、その後の変化を非常に危惧していた。前回の味にやや失望したせいもあり、しばらく足が遠のいていたわけだが、今回訪れてみて、私の不安は払拭された。 「ザイオン・ロックス」のカレーは、かなり完成の域に近づいていた。 スープの旨みを十分残しつつ、スパイスの刺激も堪能できる。開店当時にはなかった味が、明らかに補完されているのだ。 そして、具材の豊かさにも驚かされた。私の注文は「チキンカレー、辛さ4番、スープ大盛り」であった。チキンカレーを頼んだものの、実質的に(ランチタイム時には)「ザイオン・ロックス」のカレーは、チキンカレー一筋になったようだ。他に、「おからのハンバーグ・カレー」と「カボチャとチーズのカレー」などもあるが、いずれも5食限定の限定メニューであり、基本はチキンカレーなのである。 個人的には、チキンカレーよりもベジタブル・カレーの方が好きなのだが、その心配は全くなかった。チキンカレーとは言っても、非常にたくさんのベジタブルが入っている。ジャガイモ、インゲン、デントコーン、ピーマン。チキンを抜いても、十分ベジタブル・カレーとして通用するほどの、ベジタブルの豊富さである。スープと具を一口ずつ交互に食べていっても、最後まで具が不足することがなく、非常に満足感が得られる。 チキンは底の方に沈んでいて(スープ大盛のせいもあるかもしれないが)、チキンカレーというには自己主張に欠けるむきもあるが、皿を見た瞬間に私に一つの危惧が思い浮かんだ。こんなにチキンが沈んでいては、チキンが食べずらいではないか。チキンの骨が取りずらくてしょうがないでは、と。しかし、その危惧は全く必要なかった。すなわち、このチキンには骨がついていなかった。私はカレーの食べやすさに特段のこだわりを持つ (詳しくは「サボイ」参照)。スープカレーのチキンといえば、骨付きのチキンが一本まんま入っているというのが、今や常識化している。確かに、チキン丸ごと一本はゴージャスなのだが、骨を取るのが取りずらいという欠点を背負っている。また店によっては、十分に味がチキン全体にしみとおっていない場合すらありえる。例えばチキンカレーの失敗例として代表的なものは、『ピッキーヌ』のチキンがあげられる。 『ザイオン・ロックス』のチキンカレーは、チキンが丸ごと入っているという常識から脱することで、食べやすいチキンカレーを実現した。そして、チキンの隅々まで味が行き渡っているのだ。 辛さについては、五段階から選べるという選択は丁度良いだろう。たまたま二日酔いだった私は、4番を選んでしまったが、そんなに辛くもなく、適度にスパイシーで非常に心地よかった。辛いのが好きな人には、さらに辛くもしてくれるようで、その辺のサービスもうれしい。 しかしながら、いくつかの問題点もある。 まず、スープに油が入りすぎている。これは、チキンから出た油か、スープをとったときの油かわからないが、最初に運ばれてきたスープの表面を、油の膜が分厚くおおっている。後半は良いものの、最初の数口は極めて油分の多いスープを飲まされるはめになる。油好きの私が油っぽいと思うのだから、他の人はもっと油っぽいと思っているのではないだろうか。 もう一つの問題点は、スープが冷めているという点である。最初にスープを温めて、出てくるので冷めているというのも変だが、スープの温度が数度ぬるい印象がある。特に後半はそうである。その理由は器にある。底が平らな円形のこの器は、食べやすさという点では、最も理想的である。ジャガイモやチキンをナイフで切るときも、非常に切りやすいし、たくさんの具が入っていても、自分の食べたい具をとりやすい。しかし、スープと器との接触面積が大きいということは、それだけ冷めやすいということになる。せっかく、過熱したスープが器に入れた瞬間に器に熱を奪われて冷めてしまっているのだ。スープを高温にまで過熱すると、スープの水分が蒸発してしまい、味が変わってしまう。やはり、器を暖めておくという配慮が欲しい。そうすることで、同じ味のカレーをさらにおいしく味わえることだろう。 食べやすさという観点から言えば、インゲンはいけない。インゲンは普通のカレーなら、彩りとして二、三本入っているのが普通であるで、ここのカレーには六本くらい入っている。それはそれでうれしいのだが、それが結構食べずらかったりする。そのまんまフォークで口に運ぶには、インゲンはやや長い。自分でナイフで半分に切ればよいと思うかもしれないが、具が豊富なだけに、ジュガイモやチキンの合間を縫って、ナイフでうまく切るスペースを見出すのはかな大変である。最初から半分に切っておいてくれると、私的には非常に助かる。 カレーにおける卵。その観点から見ると、ここのカレーはゆで卵がカレーの中にではなく、ライスの添え物としてついているところが興味深い。卵がスープの中に入っていた方が良いのか、あるいはこの形式が良いのか、人の好みもあるだろうが、私には判断できない。卵が、ちょっとだけ半熟になっていたことは、大変評価できる。しかし、それ以上に大きな謎は、卵が白身の白い側を上にして出されてきたことだ。普通は、彩りを考えて黄身の黄色い側を上にして盛り合わせられるはずなのに。 ランチタイム700円という値段は手ごろだし、ドリンクが100円というサービスもうれしい。ライスやスープを大盛りにして、ドリンクを飲んでも1000円以内で収まる。 |
開店当時、「この店は、一年間もつだろうか」という心配があったが、今はその恐れは全くない。私がおとずれたその日は、店内は満員となり、二人ほど立って待っていたほどである。『村上カレー プルプル』から二ブロックと離れていないこの場所で、カレー店を出すのは、立地条件が悪いと思っていたが、そうした心配ももはやないだろう。『ザイオン・ロックス』のカレーは、『プルプル』のカレーとは全く違った個性を持っている。全く違った世界を創造したのだ。 『ザイオン・ロックス』のカレーはかなり完成形に近づいている。それが完成形にたどり着いたとき、このカレーはブレイクするだろう。もう一歩である。現在は、★★★にしたが、今後★★★★になる日も近い。私の最も応援したいカレー屋の一つが『ザイオン・ロックス』であり、今後の検討に大いに期待したいところである。 (2000年10月5日) |
卵は、卵黄を上にして置いて欲しい。 ランチでは、ドリンクがオール100円は、うれしいぞ。 |
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木造の家はかなり古い。 今どき札幌では珍しい、汲み取りトイレは決して入ってはいけない。 |
管理人の樺沢紫苑(zion)と同じ名前であり、非常に近親感が湧く。今後も、がんばって欲しい。 |
南1条通りの新生堂印房から仲通に入るとある。ちょっとわかりにくいので、注意しよう。 |
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