樺沢紫苑の札幌激辛カレー批評 |
スープカレー らっきょ 札幌市西区琴似1-1 カピテーヌ琴似1F 011―642―6903
|
|
「らっきょ」の月替わりメニュー「パイ包みスープカレー」がおいしいという情報が入った。とはいえ、新店めぐりで忙しい。いつものスープを鉄鍋に入れてパイ生地を被せて焼いただけ。スープの味自体が変わるでもないし・・・と思っていた。でもやっぱり食べたいので、訪れる。 私の考えは、完全に間違っていた。 「やばい。まじうまい」 この旨さは、半端ではない。 なぜ、パイで包んだだけで、これほどおいしくなるのか? まず、パイ生地でフタをされた鉄鍋が運ばれて来る。パイ生地のバターの香りが強烈。この時点で、猛烈に食欲がかき立てられる。そして、パイ生地を崩してスープを露出させると、スパイスの風味が立ち上り、バターの香りと混じって絶妙な香りとなる。この時点で、この一皿がただ者ではないことは察しがつく。 まず、パイ生地を直接食べてみる。パイのサックリとした食感は当然あるが、思った以上にパイが厚く、中の方はパンのようにフンワリとしている。サックリ、そしてフンワリ。両方の食感が楽しい。そして、バターが溶け込んだ部分は、また格別な味わいだ。今度は、パイをスープに浸していただく。フワフワのパンの部分が、スープがよく吸収する。スープにパンを浸して食べるのと同じ。とてもおいしい。今度は、スープを直にいただく。うまい。コクがある。これって、以前の「らっきょ」よりスープがおいしくなっていないか? キノコから出たダシだけではないと思う。 見たところチーズがないと思ったら、突然口の中にチーズが出現した。チーズはスープ底に沈んでおり、時々不意にスプーンの中に紛れ込む。スープとパンが最高のパートナーであるのと同様に、チーズとパンも最高の相性。このパン状のパイ生地にチーズという組み合わせはベストマッチ。そして、チーズからのコクがスープに旨みを加えている。 当然、スープ自体は、いつもと同じスープなのだが、パイと組み合わさることにより、スープとライスの組み合わせが、スープ、ライス、パイの組み合わせに変化した。これによって、食べ方の組み合わせが何倍にも増えた。ライスをスープに浸して食べる。こんどはパイを浸して食べる。このように、微妙に味と食感を変えて食べられるので、最後まで全く飽きないで、スープを楽しめる。 パイ生地を加えるという若干のアレンジが、スープの味わいを何倍も引き出している。スープカレーというのは、食べていて舌が飽きやすい食べ物である。したがって、レモンを添えるとか、ちょっとした変化が味の大きなアクセンとなる。したがって、「ベンベラ」の目玉焼き、「チャイババ」のムング豆、「らっきょ」の海苔もそうだが、ほんのちょっとした味変化が大きな印象となって残るし、結果として最後までスープを飽きさせないで食べさせるという効果をもたらすのだ。 スープをパイ生地で包む。別に珍しいことではない。他のスープカレー店でも既にやっているし、十年くらい前に東京のカレー店でも食べたことがある。しかし、このスープにパイ生地は、特マッチしていると思う。基本スープはフォン・ド・ボーとほとんど同じで、トマトとバジルが加わる。もともとが、洋食のスープに近い存在であるから、このパイ生地包みという洋食技法が、全く違和感なくマッチしてくるのである。したがって、どこの店でもパイ生地で包めばおいしくなる、という単純なことではない。その店のスープにマッチしたアレンジ、それを少し加えるだけで、そのスープの持つ魅力を何倍も引き出せるということを、改めて再確認した。 それと鉄鍋に入っているので、最後までアツアツで食べられるというのも、基本的ではあるが重要な味の秘密になっていることを、付け加えておく。 とりあえず、この究極の逸品は、月替わりと言わず、冬季の定番メニューとして、3月までは是非残してほしい。 (2003年12月6日) ※2003年4月現在、「パイ包み」は「らっきょブラザーズ」で食べられます。「らっきょ」本店では食べられませんので、ご注意ください。 |
再食 久しぶりに、『らっきょ』を再食。メニューは定番のチキンカレー。辛さは5段階中の5番。 熱々のスープが運ばれてくる。このスープの温度は良い。時々、スープはおいしいのに、ぬるい店があってガッカリするが、スープが熱ければそれだけで1レベル味がおいしくなるということもこの一皿が証明している。 スープがうまい。こんなに、うまかったか? いや、どう見てもも以前より完成度が上がっている。「スープが薄くなった」という意見も聞いていたが、好みというのもあるだろうが、今のスープの方が完成度は高い。凝集されたうまみ。適切な塩加減と油加減。そして、うまさと辛さのバランス。チキンの柔らかさと油ののり具合。非の打ち所のない一皿と言っていいのでは? |
チキンカレー(5番) 850円 |
全ての均整がとれた究極の一皿である。ある人にとっては、刺激や、辛さや、コッテリ感が足りないと感ずるだろうが、この一皿としては完成されてると言わざるを得ないだろう。 今日、こがしハーブをスープに浮かべるらっきょ系のカレーが「ありがちカレー」として札幌市内のあちらこちらで認められるが、改めて『らっきょ』を食べると、こがしハーブを使ってもこれだけ油っぽくなく仕上げられるのだなあ、と驚かされる。この油加減は極めて食べやすかった。 それと、皮付きジャガイモのホックリ感と甘さ。素揚げしてあるのだが、後半になっても超熱々なのがよい。下手すると舌を火傷するほど。 ライスが甘くておいしい。『心』『クロック』と並んで、ライスの最もおいしい店である。 ただ、ライスはやや少なめ。空腹な成人男子には、ライス大盛(プラス50円)を推奨。 ということで、極めて完成された一皿を堪能した。 (2003年6月10日) |
レトルト 680円 スープカレーのレトルトが既に何種類か出ているが、いずれもガッカリさせられるものばかり。しかしながら、この「らっきょ」のレトルトはかなりいけてる。 |
昔の感想 最近、カレー屋を選ぶ私の感性は、かなり研ぎ澄まされてきた。雑誌などに紹介されている写真を見るだけでも、だいたいの味のレベルが推定できる。そして、ここのカレーは間違いなくおいしいだろうと予想していたのが、この『らっきょ』である。 以前よりずっと来たいと思っていたが、西区は私の行動テリトリーの外にあるため、なかなか来れないでいた。 場所は、JR琴似駅すぐそば。ショッピングセンター、エスパのすぐ近くで、エスパの駐車場の真ん前にある。地下鉄琴似駅からは歩くと10分くらいかかる。 |
チキンカレー(4番) 750円 |
店の外観は目立たないが、内装は綺麗で、植物の鉢植えや生花が飾られている。 メニューは、カレーの種類、辛さ、トッピング、セットかどうかを、チャートに沿って選ぶようになっており、初めて来た客にもわかりやすい。 辛さは、5番まであり、さらに大きな番数も可能であると書かれている。 チキンカレーの4番を選ぶ。 女性シェフと女性店員二人が働いている。テーブルの上に飾られた生花の理由がわかった。女性が経営している店だけあって、お客さんも女性が多かった。 ほどなく、カレーが運ばれる。半透明な赤。黒のアクセント。見るからにうまそうなカレーである。一口、食べる。「激うま」である。コクのあるスープ、そのスープのうまさを妨げない適度に刺激的なスパイス。理想的なスープカレーが、ここに体現されている。 味的には、こがしハーブを使っている共通点もあって、『マジック・スパイス』に似た味わいだが、『マジ・スパ』よりもさらにこくと味わい深さが強くなっている。 4番という辛さは私にとっては、全く辛くない辛さなのだが、スープにしみでた野菜の甘味を十分堪能できるという意味で、これを4番に設定しているのも納得がいく。『らっきょ』のカレーは、辛くなくても十分旨いが、辛さを上げていくと別な味わいが出てくるカレーであろう。 具はかなりボリューム感がある。なにしろ、チキンが二本も入っている。圧力釜でトロトロに煮込まれたやわらかチキンである。そして、スパイスと一緒に煮込まれているので、スープと解離することなく、スープによくチキンが馴染んでいる。 じゃがいもは、ベイクド・ポテトになっていて、表面部分がまたおいしい。ちょっとした技なのだが、ポテトをちょっと揚げるだけで、全体の味、具を食べるテンポに微妙なアクセントを加える。最後まで、味に退屈することなく食べさせる隠し技である。 じゃがいももニンジンも、スプーンで切れるほどやわらかい。あとは、ピーマンとタマゴが入っている。結局、私はこのスープカレーを、フォーク、ナイフを使わずにスプーンだけで食べた。 ライスは女性客が多いだけあって、女性向けの量になっている。すなわち、男性諸君にはやや少なめであるから、空腹な人は迷わず大盛りにすることをお薦めする。ライスに添えられたノリが珍しい。これは、口直しというよりは色彩という意味のほうが大きいだろう。
|
|
サービス・カード 5個でソフトドリンクまたはジェラート、10個で500円割引。 なぜ、ラッキョが出てこないのに、この店の名前は『らっきょ』なのか? 答えは、左のサービス・カードのスタンプに隠されていた
! ! |