激辛カレー批評
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 スープカレーの食べ方
 スープカレーをよりおいしく食べるための若干の理論

   第一章 ライス編

スープカレーの食べ方 基本三法

 スープカレーをあまり食べ慣れない人は、スープカレーはどやって食べればいいのかという疑問を持つだろう。私もそうした質問をしばしば受ける。
 まず、スープカレーの食べ方として、ライスとスープをいかにバランス良く食べるかという視点から、ライス編として考察を試みみる。
 まず、ライスとスープをいかに食べるかという方法であるが、主に以下の三通りの食べ方が考えられる。

(1) ライスをスープに浸して食べる。
(2) 一サジこどスープをライスにかけて食べる。
(3) スープとライスを交互に食べる。

 以上の三つである。

 (1)の食べ方を推奨しているのが、『アジャンタ薬膳カリー店』『そこぢから』『マッサーラ』などである。これらの店では、張り紙(『アジャンタ』)やメニューに書かれている(『そこぢから』)、カレーが運ばれてきた時に店員から口頭で伝えられる(『マッサーラ』)などの方法によって、この食べ方が勧められる。そのカレーに合った食べ方というものが、明らかに存在するわけだが、詳しくは後述する。
 一方、『アジャンタ』と並ぶスープカレーの老舗である『スリランカ狂我国』、そのオバチャンに聞いてみたところ「好きなように食べれば良いんじゃないの」という返事であった。
 私があちこちの店で、いろいろな客が食べる様子を観察した結果では、(2) ないしは(3)の混合パターンで食べている人が多いように思える。一サジずつライスをとって、いちいちスープに浸して食べている人は、あまり多くない印象である。
 結局のところ、好きなように、自分に最もあった食べ方で自由に食べてよいというのが、結論になるわけだが、当ページでは同じカレーをよりおいしく食べることができる秘密を伝授する。
 秘密といってはおおげさなのだが、単にスープとライスを無作為に食べていては、本当のスープカレーのおいしさを味わうことができない。私のカレー理論によると、スープカレーをより楽しむためには、店によって、そしてスープの種類と味によって食べ方を若干変えるべきなのである。

 スープにライスを入れて食べる食べ方を
推奨している店

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「アジャンタ」

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「マッサーラ」

sokojikara_curry_mini.jpg (11616 バイト)
「そこぢから」


ラーメン・ライスの理論

 札幌でスープカレーがこれほど普及した理由として、札幌の人々が札幌ラーメンになじんでいたという素地があったと考えられる。すなわち、スープにうるさい、あるいはスープ好きの人が札幌には多いということが、スープカレー・ブームの重要な背景と考えられる。
 そしてラーメンといえば、必ずライスを頼む人がいる。私もその一人である。スープカレーをおいしく食べるための秘密は、ラーメンとライスの関係に隠されている。
 ラーメンにライスはつきものなのだが、それはラーメンをよりおいしく食べるためのコツともいえる。単に満腹感を得るためにライスを食べるのではなく、ラーメンの合間にライスを食べることで、コッテリとしたスープの口直し的役割を果たす。また、ライスにスープを浸して食べることで、スープの味がすこし別な味わいに変化して、多彩な味を楽しむことができる。スープは一瞬にして口の中を通り過ぎるが、ライスに染み込んだスープは、口内に留まる時間が長い。すなわち、舌とスープの接触時間が微妙に異なるので、味わいが異なってくる。さらに、ライス本来が持つ米の甘味、旨みが、スープの味と複合して、スープ単独とは別な味を作り出すために、味に変化が出るのである。
 そして、こってりとしたラーメンほど、ライスとのコンビネーションが良い。味噌ラーメンには、ライスは不可欠である。こってり味のしょうゆラーメンもそうである。しかし、昔風しょうゆラーメンやあっさりとした塩ラーメンはどうであろうか。あっさり系ラーメンは、ライスなしでスープのうまみをじっくりと味わいたいという気もする。ライスの必要性は、こってりとしたスープ、あるいはしょっぱいスープほど強まるのではないだろうか。
 すなわち、ライスというのは、ラーメンにおいて、こってり感やしょっぱさをリフレッシュさせ、舌を新鮮にする役割も担っている。あるいは、味に変化やアクセントをつける重要な脇役なのである。
 この役割は、スープカレーにおけるライスに応用できる。

緩衝剤としてのライス 
 従来のカレー、すなわちルーカレーは、ルーとライスを必ず一緒に食べる。ルーだけを食べてみればわかるが、ルーだけだとややしょっぱいことがわかる。インドカレーもそうで、インドカレーをライスやナンなしで、三口も連続して食べると、しょっぱくなる、あるいはスパイスが強いだけで、おいしいとは感じなくなってしまう。
 ルーカレーやインドカレーは、ライスと一緒に食べることを前提として、しょっぱさや辛さが調整されている。
 しかし、スープカレーの場合はそうではない。辛さよりも特にしょっぱさである。しょっぱさが、スープだけで食べる場合に照準を合わせて調整されているのか、あるいはライスと一緒に食べたとき最もおいしくなるように調整されているのか、それが店によって異なるのである。そこが、大きな問題である。
 『エス』のスープカレーや『マッサーラ』などは、ややしょっぱさが強い印象を受ける。もちろんしょっぱくない人は、そのままスープだけで味わえばよい。しかし、しょっぱいと感じる場合は、できるだけライスと一緒に食べるようにするといい。あるいはライスのみならず、具もしょっぱさや辛さを中和する重要な脇役となる(詳しくは、具編を参照)。実際、『マッサーラ』ではライスをスープに浸して食べるよう勧められるが、その助言はスープの濃さ、しょっぱさを考えると全く適切である。
 スープ単独では味が強すぎる場合は、ライスでその強さをうまく調整する。
 スープの味がかなり完成されている場合は、スープとライスと一緒に食べると、ライスがスープの旨みを味わうのを邪魔する場合がある。この場合は、スープだけを連続して味わい、時々ライスを単独で食べて口直しをするのがいいと思われる。この食べ方が適していると思われるのは、『スリランカ狂我国』や『マジック・スパイス』である。

 人によって、しょっぱさやコッテリさの好みというものは異なる。辛さを調整してくれる店は多いが、スープそのもののしょっぱさを調整してくれる店はない。その問題は、自分で、ライスをいつどのように食べるかによって調整すれば、クリアーされるのである。

大盛りの調整
 ほとんどの店では、スープ、またはライスの大盛りを選択することができる。いくつかの店では、ライス大盛りを無料で行っているところもある。多くの人は自分の空腹具合でどちらかを大盛りにすると思うが、それだけではベストの味でスープカレーを味わうことはできない。
 
 ライスとスープを一緒に食べるのが一番おいしいカレーは、ライス1、スープ1で一緒にに食べていくと、後半になるとライスが足りなくなる。大抵のスープカレーはかなりたくさんの量のスープが入っているので、スープ1.5から2に対してライス1くらいの割合が一般的である。したがって、その割合を1対1に近づけるために、ライスを大盛りにして注文するという手がある。
 例えば、『マッサーラ』のカレーは、まさにスープとライスを1対1で同時に味わうのが最もおいしく食べれると思うが、最初のライス量では、後半スープがだぶついてくる。幸いにも、ライスのおかわりが自由なので、最後まで1対1のベストの割合で食べれるということになる。
 一方、『スリランカ狂我国』や『マジック・スパイス』のように、スープだけで十分おいしいカレーは、むしろライスは邪魔くさく感じる。その場合は、スープを大盛りにして、スープのうまさをとことん堪能するのがいいだろう。しかし、後半になってくると、口直しとしてライスの存在が不可欠になってくるので、スープ大盛り、ライス普通盛りというバランスがベストということになる。
 多くの人は、無意識に、あるいは本能的にこうした判断をしているのだろうが、それを論理的に説明すると上記のようになる。
 
 店ごとに最もおいしいメニュー設定と食べ方というのがある。例えば、私は『スリランカ狂我国』では、「マッシューベジタブル50番スープ大盛り」を注文するが、このメニューでこの辛さで食べるのが、自分の口、好みにに最も合っていて、ライスとの量的バランスが良いからなのである。
 カレーを楽しむというのは、単においしいカレー屋を探しあてることではない。おいしい店を探し当てた後も、その店で自分にとって一番おいしいメニューと辛さの設定、トッピングなどの組み合わせを探すという楽しみがある。いわゆねカスタマイズということだ。
 ちょっしたトッピングや、具の追加によって、全体の味が引き締まったり、大きく変わったりする場合がある。自分にとってベストの一皿を探求する旅、それがカレーの楽しみである。                           (2001年4月8日)


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