樺沢紫苑の札幌激辛カレー批評 |
亜細亜カリー てら家 札幌市白石区本郷通11丁目北1-1 |
|
再食 チキンキノコ 『てら家』がおいしくなったという評判を聞いた。ランチタイムには満員になっているという。2003年春の投票では、18位と20位以内にも入り込んでいる。これは、再食せざるをえない。 本日の注文は、「チキンキノコ、辛さ火」にした。 辛さによる追加料金なしは、好感度アップ。 スープが運ばれてくるが、昔の『てら家』とは全く別物である。盛り付けも、具も、そして丼ではなく普通の皿になっていた。 味も、昔の『てら家』とは別物である。というか、数段階レベルアップしている。一言で言えば、「こくまろ」。スープにコクと旨みがあって、のど越しがまろやか。味的には違うが、食感的には『イエロー』である。この独特のコクというのは、特筆すべきものがある。スープはサラサラだが、茶色である。いろいろな旨み成分が溶け込んでいそうな雰囲気。茶色のスープというのは少ないが、『チャイババ』のスープも茶色であり、「しっかりとした旨み」という共通点もある。 スープ自体の旨さで評価するなら高得点をあげていいが、いかんせんしょっぱい。とはいっても、『Voyage』の「曼荼羅」くらいであるから、若者にしては丁度いいのかもしれない・しかし、「曼荼羅」同様に、せっかくの絶品スープを塩分が邪魔しているように感じられる。おそらくは、「ライスと一緒に食べろ」ということなのだろうけど、この特筆すべき「コクマロ」感は、ライスと食べるよりもスープだけで味わった方が、よりストレートに楽しめる。 それと、スープの量が非常に少ない。これも「ライスと一緒に食べろ」というメッセージととれるが、後半にはスープが足りなくなる。次回は、スープ大盛にしようと思うが、メニューには「スープ大盛」は載っていない。そのせいか、これだけスープがおいしくても、何か満足感がない。 具のキノコとチキンはおいしい。特に、キノコは特筆すべきうまさがある。エノキとシメジが入っているが、エノキがGOOD。エノキは鍋料理の具として定番だが、スープカレーにもよく合うということが証明された。すなわち、エノキはその間隙にスープをよく吸収する性質を持つ。したがって、おいしい鍋のスープを吸い込んで、本来のキノコの味わいにスープの味わいを加えて別な味へと変貌する。この『てら家』のエノキは、スープを吸収して、絶妙なうまさになっている。スープのしょっぱさが、ここでは幸いして、シメジに吸収されることで、シメジに適度の塩味を追加することで、よりおいしさをアップしている。チキンは皮の部分は油がのっているが、身自体はあっさりとしており、スープに浸して食べると、同様にスープの味を吸収しておいしい。 スープは写真で見ると油っぽく見えるし、オープン当時の『てら家』も油っぽい感じがしたが、今回はそれは全くない。スープ表面に油膜はなく、油加減は全く適切。 サフランが強めのサフランライスは、このスープによく合う。 皿が丼から大きな平皿に変わったのは、大成功である。『てら家』の一つの特徴は、金属のレンゲで食べるとことだが、平皿の底をまな板代わりにして、チキンなどの具を金属のレンゲのエッジを使って、うまくカットすることができる。すなわち、非常に食べやすい。 さて、スプーンではなく、レンゲを使っていることの意味。もうひとつは、スプーンよりもスープを飲みやすい。一度にたくさんのスープを飲めるというメリットを持っているわけだが、このスープはライスと一緒に食べるように設計されていて、スープをぐいぐい飲めないというのが皮肉だ。 オープン当時と比べて、レベルアップが著しい。ただし、ややしょっぱい点と、スープの量が少ない点が、気になる。この辺の、微妙なバランスが改善されれば、「芸術的なスープカレー」に変貌する可能性はある。 (2003年5月24日) |
昔の味 最近オープンした店として、ちょっと評判になっていたが、やっと行くことができた。 地下鉄南郷13丁目から徒歩で7、8分かかった。場所は、本郷通沿いにあり、わかりやすい。キレイな店がまえ。窓にスパイスの名前がたくさん書かれているのがおもしろい。 注文は、話題の「トントロカレー」。辛さは、五段階。「火」を注文する。 辛さによる追加料金がないのはうれしい。 スープが置かれる。スープはドンブリに入っている。かなりおいしそいなカレーだ。スープの見た感じは『らっきょ』に似ている。しかし、味的には『マジック・スパイス』である。スープの口当たり、後味が『マジ・スパ』に近い。『マジ・スパ』と同じスパイスを使っている。スープは非常にさらっとしている。あっさりとした口当たり。この辺が、好き嫌いを分けそう。 |
|
辛さ (辛さによる追加料金なし) |
風 → |
空 → |
天 → |
火 → |
炎 → |
それ以上の辛さも可 |
こく、ふかみは少なく、うまみを重視したスープである。うまみ系スープカレーファンには、結構楽しめるカレーだろう。 辛さはどうか。「火」の辛さは、私にとっては、もの足りないものだった。激辛カレーファンにとっては、迷わず「炎」で大丈夫だろう。 辛味は、『マジ・スパ』とだいぶ違う。スープの色を見ればわかるように、赤系スパイスで出している。 辛さに複雑さがない。単調な辛さの増加。さらに『マジ・スパ』と異なり、辛さ以外の刺激系スパイスが少ないので、辛さがつまらない。 |
具はどうか。カレーの具として、トントロは珍しい。というか、『てら家』が初だろう。おいしい。しかし、すごくおいしかどうか分からない。おいしいけど食べずらい。やわらかいけど、スプーンの先で切れるほどは柔らかくはないので、ライスの上に移して切らないといけいない。口の中で、とろける。しかし、トントロはスープと一緒に食べるとスープはあっさりとしているので丁度良いのだが、器がドンブリであるため、器の中でトントロを切ることは困難。スープと一緒に食べるためには、皿の上でトントロを切ってさらにドンブリに戻さなくてはいけないという面倒くささ。チキンと違って、スープの中でぼぐして食べるという食べ方ができないというデメリットを抱えている。同じトントロなら、もっとドロドロになる直前まで柔らかい方が良いのではないか。今のトントロであれば、普通のチャーシューの方が私は良い。 他の具は、ニンジン二本、ピーマン二本と小さめのジャガイモ。ニンジン二本、ピーマン二本というのが、あまりにつまらない。バラエティに欠く。ピーマンは、彩りとして入れられ場合が多いが、この底の深いドンブリでは彩り効果が低い。ニンジン二本というのは飽きてしまう。もし、ニンジンとピーマンが嫌いな人は、食べるものがなくなってしまう。野菜の種類を、もっと検討すべきである。野菜では、ジャガイモがプリッとしておいしかたった。 さて、このカレーの最大の問題は、非常に単純である。それは、ドンブリを使っていることだ。果たして、普通の皿ではなく、ドンブリを使っている意味は何なのか? まず、ドンブリを使っていることで、具が非常に切りずらい。金属のレンゲで食べるというのが珍しく、その工夫はおもしろいのだが、それが生かせない。なぜなら、この「火」の辛さではスープは真っ赤で透明度は数ミリしかないので、スープに沈んだトントロがどこにあってどのくらいの大きさなのかがわからないので、ドンブリの中でカットすることが困難になっている。 さらに、ドンブリを使うことによって、視覚的なおもしろみが損なわれてしまっている。例えば、ジャガイモの白が半分くらい見えているだけで、もっとおいしそうなカレーに変身することが出来る。ドンブリを使うという珍しい演出。しかし、それは食べずらいだけで、何のメリットももたらしていないのではないか? 総評。スープ自体は非常においしい。しかし、辛さへの工夫、こだわりが乏しい。具の楽しさが少ない。ドンブリを使っていることが、多くのマイナス効果につながっている。 スープ自体は今のままで文句ない。ちょっとした工夫でもっと食べやすく、おいしいカレーになる余地を残している。うまみ系カレーの好きな人は、一度食べて損はないだろう。激辛系、コッテリ系のファンにはものたりない。 清潔な店内は、女性客なども入りやすい雰囲気を作っている。あまり辛くないスープカレーを食べたい人にもおすすめである。 (2002年1月26日) |
|
[ホームに戻る] |