エクソシスト ビギニング 完全解読編 |
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エクソシスト ビギニング Exorcist The Biginning 完全解読編 <ネタバレあり> ラストシーンを含め、映画のストーリーの詳細が書かれています。まだ、映画を見ていない人は、決して読まないでください。 |
このページはリンクフリーです。 是非、あなたのホームページにリンクしたり、ブログや掲示板でご紹介ください。 この作品は、典型的なハリウッド映画である。 「エクソシスト ビギニング」(以下「EB」)には、いろいろなテーマが含まれているが、この三つの観点から解読を始めるのが、分りやすいだろう。 (1)ローマ帝国について ファーストシーンの死体が累々と重なるシーン。 |
少しわかりずらいが、この死体はローマ帝国の兵士である。 このシーンの兵士の鎧に、PとXを合わせたシンボルが見られる。これは、古代ギリシャ語のX(Chi)とP(Ro)を組み合わせたものであり「Chi - Ro(チィロー)」と読む。 「Chi - Ro」とは、「キリスト」を意味する。 キリスト教を国教としたローマ帝国は、この「Chi - Ro」のシンボルを、盾や鎧などに使用していたのである(図1)。 つまり、これらの死体の山は、ローマ帝国の兵士である、ということが説明されている。 |
図1 ローマ兵の盾 |
これだけでは、「ローマ帝国=悪」ということにはならない。 しかし、残虐なローマ帝国は、こうした皆殺し的な(自軍にも多大な犠牲者が出る)戦争を何度もしてきている。 このファースト・シーンは、メリン神父の夢(イメージ)のようだが、ローマ帝国の持つネガティブなイメージを、映画的にうまく利用している。 |
「エクソシスト ビギニング」を理解するためのトリビア <<映画の舞台ケニアのトゥルカナは、人類の起源の場所である>> 90ヘエ さて、謎に満ちた教会の発掘現場は、ケニアのトゥルカナ地方にあった。 なぜ、ケニア、そしてトゥルカナという聞いたこともない場所なのか? 実は、トゥルカナでは、ホモ・ハビリスの人骨が発掘されている。このホモ・ハビリスとは、160-190万年前のものとされ、世界で発見されている最も古い人骨の一つである。 すなわち、トゥルカナは「人類の起源」の場所、といえるのだ。 「EB」で描かれるのは、「悪魔の起源」である。つまり、悪魔は人間の誕生とともに生まれた、ということがこの「トゥルカナ」の設定によって、示されていると思われる。 |
(2) ナチス/ユダヤ問題について ナチスドイツ、そしてヒトラーといえば、悪役の定番。 しかし、この映画のナチスは、他の映画と比較しても、とんでもない絶対悪として登場していると言えよう。 私の家内が、映画を見た後に言った。 「悪魔よりも、ナチスの方がよっぽど怖い」 全く、正しい指摘である。 というか、正しくそうした印象を狙っているのだろう。 メリン神父が神父を辞めるきっかけとなった事件。 ナチス占領下のオランダ。ナチス兵士が殺害される。 凄いシーンである。 夢に登場する、殺されたユダヤ人の少女。 映画を見ていて、サラとこう名前にピンと来た人がいれば、かなりのものだ。 |
アブラハムを知らない人も多いだろうが、アブラハムはユダヤの族長。ユダヤ人の信仰の父とあがめられる。その妻サラは、年老いて子供イサクをみごもる。アブラハムとサラの子供たちの祖先が、現在のユダヤ人ということになる。。 したがって、このサラという存在は、ユダヤ人の代表的な存在、「ユダヤ人そのものの象徴」、そんな雰囲気の意味合いが込められているだろう。 ユダヤ人女医サラ。そして、メリンが見殺しにしてしまったユダヤ人の少女。 この二人のユダヤ人女性が、メリンの頭の中でオーバーラップしていく。 実際、悪魔との対決の最中に、サラの顔が、少女の顔に変化する描写もある。 |
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二人のユダヤ人女性。 「サラ=悪魔の犠牲者」 そして、「少女=ナチスの犠牲者」 二人がオーバーラップ描写から、「サラ=少女」 この方程式の答えは、「ナチス=悪魔」である。 ナチスは悪魔的に悪い奴だ、ということ。 さて、ユダヤ人のサラが、悪魔パズズに憑依される。 悪魔に憑依されたサラは、ナチスに迫害され、悪魔にも蹂躙された。夫は自殺し、サラ自身も最後には死んでしまう。踏んだり蹴ったりである。 サラはユダヤ人の象徴。 |
「エクソシスト ビギニング」を理解するためのトリビア <<「ジョセフ」という名前の人物は聖書に三人出てくる>> 30ヘエ 劇中ではジョゼフと発音されているようだが、表記はJoseph。一般的には、ヨセフと読まれることの方が多い。 このヨセフは、聖書には三人登場する。 旧約聖書、ヤコブの息子ヨセフ。 新約聖書、イエスの父、大工のヨセフ。 新約聖書、アリマタヤのヨセフ(イエスの遺体を引き取った人物)。 実はヤコブの息子ヨセフは、上記のアブラハムとサラのひ孫にあたる。すなわち、ユダヤ人である。 |
(3) 反英描写について 「EB」の舞台は、第二次大戦直後のケニア。 しかし、イギリス側、キリスト教側は、その警告を無視し、発掘を続ける。 (4) イギリス植民地主義とキリスト教に対する批判 さて、パズズの大きな像がキリスト教会の下にあった。 原住民は、パズズを崇めていた。 神(唯一神でない多神教の神)は、その土地の守護者であり、時にタブーを犯したものには、懲罰を与える。教会の発掘を進めるイギリス人たちは、原住民たちにとっての神域を侵した。 パズズは悪魔という設定だが、「全ての人間に災難を起こす絶対的な悪魔」とは描かれていない。 今回の一連の事件で死んだ人、悪魔によって殺された人、あるいは不可解な死をとげた人たちを並べてみよう。 |
「エクソシスト ビギニング」の死亡者リスト |
・ ジョゼフの兄 ・ アル中の男 ・ 自殺したサラの夫 ・ 自殺した少佐 ・ フランシス神父 ・ ジョゼフの父 ・ サラ |
(クリスチャン) (白人) (イギリス人) (クリスチャン) (クリスチャン) (ユダヤ人) |
全て、イギリス軍と教会関係者、すなわち西洋文化側の人たちである。「ちょっとまて、ジョゼフの兄と父は原住民だろう」と反論する人もいるだろう。しかし、ジョゼフとその家族は、キリスト教に改宗している。だから、名前は原住民の名前ではなく、クリスチャン・ネームである「ジョゼフ」なのである。つまり、ジョゼフの兄も父も、教会側、西洋文化側の人間である。 この死亡者リストを見ると、ラストの修羅場(少佐により原住民の族長が殺される以降)を除けば、原住民側で死んだのは、流産した子供だけである。 |
すなわち、パズズは土地神であって、原住民たちの土地を侵略し、彼らのもともとの土着の宗教、習俗を踏みにじる西洋文化を持ち込もうとした人間たちに、天罰をくらわした。それだけではないのか? 侵略者(イギリス、キリスト教)と 侵略者に反対する者(パズズ) どちらが悪か? |
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「EB」では、このようにイギリスによる植民地政策、そしてキリスト教のミッションという名を借りた精神的侵略。 途上国への西洋文化の侵略に対する批判が暗に描かれている。 植民地主義に対する批判に関しては、少佐の悪役ぶりからみて、ほとんどの人は同意するだろう。しかし、キリスト教について批判的かどうかは、多少意見は分かれるかもしれない。 しかし、原住民たちは、イギリス兵のみならず、教会に対しも反感を抱いていてたのは事実だ。そうでなむけば、逆さ十字架という最も反キリスト的な象徴を用いて警告をしないだろう。 キリスト教は、偶像崇拝を禁止している。 これは映画だけの話ではない。 「EB」の悪魔パズズのイメージとして、ハエとウジが多用されている。悪魔とハエといえば、「蝿の王」と呼ばれる、ベルゼブブを思い出す。パズズには、ベルゼブブのイメージがオーバーラップして描かれている。ベルゼブブは、キリスト教的には魔神の君主であり、サタンに次ぐ悪魔の二番目の実力者とも言われる。 劇中のパズズは、現実のパズズとは、異なるものと考えた方がよさそうだ。しかし、キリスト教は異民族の神を悪魔よばわりしてきた、という歴史的事実だけは、劇中にも採用されている、ということだ。 |
「エクソシスト ビギニング」を理解するためのトリビア <<パズズ像のデザインは、実在のパズズ像と同じである>> 95ヘエ |
パズズ像 ルーブル美術館所蔵 |
パズズ頭像 大英博物館所蔵 |
パズズ像 「エクソシスト ビギニング」 劇中 |
劇中の写真と実際のパズズ像をよく見比べて欲しい。 全く同じであることがわかる。 |
「エクソシスト ビギニング」を理解するためのトリビア <<「エクソシスト」でパズズが、イラクで発掘をしていたのは、パズズとバビロニアが関係あるからである>> 70ヘエ 「エクソシスト」のオープニング、メリン神父はイラクの遺跡で発掘をしている。そして、そこでパズズの頭像を発掘する。 でも、なぜイラクなの? 上記の、もともとの(歴史上の)パズズは「バビロニア神話の風の魔人である」。 古代都市バビロンは、現在のイラク、バグダッドま北100キロあたりにあったとされる。だから、イラクなのである。 「EB」の冒頭で古物収集家から見せられたパズズの頭像と、「エクソシスト」でメリンが発掘した頭像は、ほぼ同じ形をしている。メリンが頭像を発掘したときの驚きの表情。 それが、「EB」で説明されているというわけだ。 |
「エクソシスト ビギニング」を理解するためのトリビア <<イギリス軍によるケニア人虐殺は実際にあった>> 80ヘエ 劇中、イギリス軍が抵抗するケニア人を皆殺しにするシーンがあるが、これはマウマウ団の反乱、を下敷きにした設定ではないだろうか。マウマウ団とは、ケニア最大の民族キクユ人を主体に、1950年代初めにケニアで反英国植民地武力闘争を担った秘密結社。ゲリラ戦術を展開したが、英軍の鎮圧で数万人が死亡したとされる。 |
(5)本当の悪は何か? 「EB」が我々に突きつけるテーマ。 |
罪なきユダヤ人を殺すナチス。 勝手に侵略しておいて、服従しないからといって住民を虐殺するイギリス軍。 悪魔より人間の方がよっぽど悪い!! 誰でも、そう思う。 多分それが、「EB」のテーマだろう。 つまり、「EB」において、「悪魔=悪」ではないのだ。パズズは侵略者に対して制裁を加える。原住民の守護神であって、決して悪ではない。 悪魔は、人間が持つ「悪」を引き出し、増幅するだけ。 たとえば、ジョゼフに悪魔がとりついた瞬間。 ジョゼフのヘラを取り上げた兄に、狂犬が襲いかかる。 これは、ジョゼフの中に目覚めた、怒り、あるいは殺意を、悪魔が野犬をつかって体現しただけのこと。 ジョゼフが、兄に対して怒りを抱かなければ、悪魔も勝手に少年にとり憑くことは出来ない、そういう描写だ。 少佐の原住民の族長を射殺したことがきっかけで、イギリス軍と原住民の殺し合いへと発展する。イギリス兵が同士討ちをしていたことから、悪魔によって狂わされていたのかもしれない。 聖書における悪魔も、別に直接人の命を奪うようなことはしない。 悪いのは「悪魔」ではなく、人間が持つ「悪」なのである。 (6) 神は存在するのか? ナチス将校はメリン神父に言う。 いるはずがない。いればこんな悲劇はおきない。 そして、同じ質問が繰り返される。 「もう、ここに神などいない」 当然、メリンは神をいると信じている。 メリンが、このケニアの地を訪れたのも、最初は悪魔払いのためではない。遺跡の調査、聖遺物の発見が目的である。 しかし、そこで少年が、悪魔に憑かれる(?)。この時点でも、まだメリンは「悪魔祓いをしよう」という決断には達しない。 ここに、神は本当に存在するのか? (7) ラストシーンの解釈 |
さて、ラスト・シーン。広場のようなところで、古物収集家と会うメリン。 この場所はバチカンである。 「私はメリン<神父>だ」と力強く言う。 信仰を回復し、神父に復帰したという力強い宣言。 そして、サンピエトロ広場からサンピエトロ寺院へ向かって歩いていく。多くの人は、「メリンは神父に戻った」それを表現する描写であると考える。 |
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しかし、そう考えるには、あまりにも不自然である。 バチカンの人口はわずかに800人程度。世界中の神父の99.9%は、バチカンにはいない。世界各国の教会にいるのである。 したがって、普通なら、古物収集家と別れた後に、大きな教会へ入っていけば、それで済む話なのだ。 メリンは、なぜバチカンに入っていったのか? 一つは、バチカン内に悪魔払いを行なう神父がいる、という現実の事実にもとづいた描写という可能性がある。しかし、メリンはもともとエクソシストであったが、オランダの教会につとめる神父だった。 「エクソシスト」においても、メリンはバチカンから派遣されるものの、バチカンにいたわけではなく、イラクで発掘をしていた。 バチカンへと入るメリン。 この描写の意図する所は何か? だいたいにして、バチカンって何? 「悪魔が追い払われキリスト教の完全なる勝利」という解釈が普通だろう。
さて、ラストシーンを解釈する前に、そもそも「EB」でキリスト教が、どう描かれていたいたかを、検証してみよう。 ケニアの奥地で理想に燃え熱心に布教活動をしていたフランシス神父が登場する。異教徒、邪教を崇拝する未開人をキリスト教徒にすることは、イエスの素晴らしい教えを知らせるといいうこと。キリスト教的には素晴らしい行為とされる。 逆さ十字架。究極の反キリストイメージ。 例えば、ファースト・シーンのローマ兵の死体。なぜ、鎧に「キリスト」の文字が書かれているのだ? 一応、この兵士がロ−マ兵だと説明するという意味はある。 |
メリンはどういう人物だったか? 酒を飲み、女人禁制を破り、墓を暴く。 戒律破りのオンパレード。 |
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酒を飲み、タバコを吸い、自殺した。
「エクソシスト」第一作のカラス神父にオーバラップする描写である。 「悪魔(ルシファー)の世界支配」の伝説の話がある。 しかし、この映画の中で実際に世界を支配しようとするのは、 この三つが「悪魔の世界支配」と同列に扱われている。 このように、「EB」のキリスト教にプラスのイメージは存在しない。 しかし、反論する人はいるだろう。 では、私もこれに反論しよう。 悪魔は追い払われた、しかし、結局サラは死ぬ。 しかし、これは順序が逆ではないのか? 彼女が死んだ。 「しかし、一瞬正気にもどったサラが十字架を握り締めるという描写が入っているじゃないか。やはり、悪魔祓いは成功した。神の勝利だ」とまた、反論が来るだろう。 確かに十字架を握るシーンは、信仰の勝利、キリスト教の勝利を象徴する。 普通なら。 しかし、あなたは忘れている。 サラが<ユダヤ人>だということを。 クリスチャンでもない、異教徒の彼女が十字架を握ることに、 キリスト教の賛美? むしろ逆じゃないのか? 謎は深まるばかりだ。 (9) 結 語 悪魔は追い払われるが、カラス神父は転落して死亡。 あなたは、どっちだ? |
「エクソシスト ビギニング」を楽しむための資料集 |
エクソシスト
ディレクターズカット版 DVD 税込価格:1575円 特典として収録されている、フリードキン監督の音声解説は必見である。「エクソシスト」のテーマに関する言葉は「なるほど」と唸られる。さらに、一シーンにどれだけの情報が盛り込まれ、表現されているのか。映画とはどう見ればいいのか? そんな映画学的にも興味をそそられる解説である。 もちろん、まずは作品を楽しんで欲しい。 「エクソシスト」は、樺沢の生涯ベスト20に入る作品である。 |
悪魔の系譜 著者:J・B・ラッセル 大滝 啓裕 出版社:青土社 税込価格:2854円 悪魔の誕生からその広がりまでを、古代から現代にいたるままで、神話・宗教・文学・歴史・心理学や、社会的背景などから克明にあとづけた悪魔学の決定版。著者のラッセルは、カリフォルニア大学・歴史学科教授。「悪魔」について、本物の知識を身につけたい人にお薦め。最後には、アウシュビッツや広島の悪魔性らついても言及され、人間が持つ「悪」に収斂していくあたりは、「EB」にも通じる。 |
エクソシスト 著者:ウィリアム・ピーター・ブラッティ/宇野利泰 出版社:東京創元社 税込価格:1029円 第一作「エクソシスト」の原作。557ページと、読み応え十分。当然、映画に含まれていない部分も多く、特にカラス神父が悩み苦しむ部部が興味深い。これを読めば、「エクソシスト」はホラー映画ではなく、人間の心の闇を描いた文芸作品であるということがおわかりいただけるだろう。文句なしの傑作である。 |
エクソシストとの対話 著者:島村菜津 出版社:小学館 税込価格:1575円 バチカン内に実在するというエクソシストの実態。現実の悪魔払いの現実を描いたノンフィクション。21世紀国際ノンフィクション大賞優秀作。 |
憑依の精神病理―現代における憑依の臨床 著者:大宮司 信 出版社:星和書店 税込価格:2804円 憑依現象について、精神医学的に詳細に記した医学書です。憑依とは何かに始まり、治療にいたるまで、憑依のあらゆる側面がもらさず記載されています。精神科医が憑依について勉強するための本ですが、憑依についての専門的な知識をどうしても知りたいという人には、専門書の中では最もわかりやすく、最もまとまっている一冊だと思われます。 |
NEW 神は悪の問題に答えられるか―神義論をめぐる五つの答え 著者:スティーブン・T. デイヴィス 出版社:教文舘 税込価格:3675円 神が善で全能であるなら、なぜ神はこの世界に悪の存在を許しているのか? 旧約聖書「ヨブ記」以来の問いが切実になりつつある今、現代英米を代表する神学者・宗教学者が「神義論」をめぐって白熱した議論を戦わせます。 「エクソシスト ビギニング」の、「もう、ここに神はいない」。いるならなぜ、こんな虐殺を見逃すのか・・・。その答が、ここにあります。 |
NEW ニッケル博士の心霊現象謎解き講座 著者:ジョー ニッケル 出版社:太田出版 税込価格:1955円 まさか、「エクソシスト」を見て、「悪魔って本当にいるのでは?」と思った人はいませんよね。 |
この本は、全米No.1ゴースト・バスターニッケル博士の、幽霊、ポルターガイスト、「悪魔の棲む家」、ドラキュラ、ゾンビから、天使、妖精などの実際に起こった事件を調査した事件簿です。もちろん、全てニセものの心霊現象であることが証明されるわけです。 なぜ、こんな根拠薄弱な事件が、心霊現象だと世間で大騒ぎされるのか? 読んでいると、むしろ大笑いします。映画「悪魔の棲む家」のもとになった家を訪れた時のレポートが一番笑えます。 心霊現象を科学的に検証する本はたくさん出ており、大槻先生の本など私も好きで結構読んでいますが、この「ニッケル博士の・・・」はおもしろさという点でお薦めです。まあどうしても心霊現象を信じたい人は、これを読んでも、「これは一部の調査結果に過ぎない。本物の心霊現象もあるはずだ」なんていう、屁理屈を言うんだろうなあ。 |
NEW 水木しげるの憑物百怪 著者:水木 しげる 出版社:学研 税込価格:1631円 日本全国から集められた憑物120が絵入で紹介されています。 「エクソシスト ビギニング」のパズズは土地神と考えられますが、日本名でも土着信仰と結びついた憑物の神々がこれほどたくさんいた、ということです。憑依という現象が、その土地の文化や習俗の一つとして組み込まれていた、ということがわかるはずです。 もちろん、水木先生の絵も魅力的です。形のない憑物をどうやって「絵」として表現するか。そこが、この本のおもしろさでもあります。 |
悪魔くん千年王国 著者:水木 しげる 出版社:ちくま文庫 税込価格:1050円 「EB」とは直接の関係はない。 しかし、水木しげるの熱烈なファンである私にとって、「悪魔」でまず連想するものといえば、「悪魔くん」なのだ。とはいえ、このマンガはバカにできない。テレビ版「くな」とは全く異なる。極めて深いテーマ。聖書を背景とした世界観。水木しげるの最高傑作にして、樺沢の座右の書でもある。「悪魔(くん)=キリスト」という図式は、「EB」にも通じるものがある。究極の点描画など絵的にも凄いものがある。大人が読んでおもしろいマンガである。 |
「エクソシスト ビギニング」を理解するためのトリビア <<メリン神父がオランダの教会にいたという設定には、ちょっとした意味がある>> 40ヘエ メリン神父が神父を辞めることになった痛い体験の場は、オランダという設定である。 ナチスといえば、ドイツ。 なぜ、ドイツでなくオランダに設定されているのか? メリン神父の生まれ故郷がオランダだから。一見するともっともらしいが、カトリックの神父であれば、故郷と違う場所の教会につとめている神父も大勢いる。 ドイツといえば、宗教改革のカルビン、ルターを生んだ国、すなわちプロテスタントの国である。 |
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