樺沢紫苑が選ぶ2000年ベスト・テン

アンドリューNDR114
遠い空の向こうに
ミュージック・オブ・ハート
イグジステンズ
エクソシスト 封印バージョン
ピッチ・ブラック
グリーン・マイル
スリーピー・ホロウ
アメリカン・ヒストリーX
10 グラディエーター

 

邦画で面白かった映画   ベストテンにするほど見ていないので数本選びました。
バトルロワイヤル
御法度
ピンチランナー
 

 『アンドリューNDR』これほど泣いた映画というのも、ほとんど経験したことがない。とにかく、人生の悲哀、生命の意義、時間、そうしたテーマが次々とたたみかけてくる展開には、ただやられたとしか言いようがない。
 『遠い空の向こうに』は、スター・ウォーズ・ファンとしては見逃せない一本であり、この作品も感動的である。演出もうまい。ただ物語、あるいは映画としての意外性、インパクトというのが、私にとっては少なかったように思えたので、二位にとどまった。
 『ミュージック・オブ・ハート』は、私の最も嫌いな女優メリル・ストリープが主演していたが、ストリープのクセが、原作の実在の女性ロベルタのキャラに隠されてしまっのがわよかったのだろう。こんな子供だけの楽団がどうやってカーネギーホールでの演奏に至るのか、とかなり懐疑的な視点で見に行ったが、映画は説得力のあるものだった。
 『イグジステンズ』は、小品ではあるが、極めてしっかりと作られた映画。クローネンバーグは、昔から見ていてそれなりの思い入れも深いが、クローネンバーグ作品の中でも『イグジステンズ』はかなり上位に位置するだろう。
 『エクソシスト』を何位に入れるかは、非常に迷った。ホラー映画大好きな私にとって、『エクソシスト』は非常に重要な映画であり、この映画が20世紀を代表する映画の一本であることは疑いがない。しかし今回は、『エクソシスト 封印バージョン』ということで、前作と比べてどれだけバージョンアップしているかということを考えてみたところ、もともとが良いだけに、やや期待はずれの感が強い。『エクソシスト』の批評もずっと書いているが、あまりにも壮大なものになってしまい、どうもまとまりがないので未だにアップできないでいる。今年中にはまとめたいとは思うが。
 『ピッチ・ブラック』は、貴重な拾い物という感じ。こういうセコイ話が、実は私は大好きなんです。『トレマーズ』とか『スクリーマーズ』とか、ちょっとしたアイデア、設定だけで観客をどんどん引っ張っていってしまうB級映画。たまりませんね。
 以上、第6位までが、私の大好きな映画といって良いだろう。
  『グリーン・マイル』は、あまり好きではないけでも、しっかり作ってあって、そこそこに感動させられたので、7位に入ってきた。
 『スリーピー・ホロウ』は、映像世界を堪能できる映画。
 『アメリカン・ヒストリーX』は、エドワード・ノートン主演ということで、少し期待しすぎてしまった。『ファイト・クラブ』の後では、どんな作品もかすんでしまうだろう。『アメリカン・ヒストリーX』を見てから、『ファイト・クラブ』を見たかったなあ、という感じ。
 10位にギリギリ入賞が『グラディエーター』。映像や戦闘シーンは、あれだけ素晴らしいのに、重要なストーリーが単純明快すぎる。もう一工夫あれば、傑作になれる映画だったのに残念である。どれだけCGやSFXが進歩しても『ベンハー』を超える映画を作るというのは、ほとんど無理なのだろう。
 日本映画は、ベスト・テンを選べるほど見ていないので、おもしろかった三本を列挙した。それぞれ詳細な批評を既に書いているので、詳しくはそれを参考にして欲しい。
 日本の映画会社は、ほとんど傾き、やばい状況になっている中、『バトル・ロワイヤル』や『御法度』のような凄い映画が作られていることにホットする。でもこの二本を作ったのは、深作欣二と大島渚という三十年前の日本映画を代表する監督だというのが、逆の意味で残念。若手監督はどうしている。若手監督に腕を試させるよりょくは、もはや日本映画にはないのか。 
 以前から私が懸念しているように、今後の映画において「CGをどう使うか」というのが、非常に大きな問題であるように思える。技術は使うものであって、使われるものではない。しかし、CGに使われている映画(『ダイナソー』『トイストーリー2』)が多いのが現実である。もはやどんな映像表現も、技術的には可能である。そうなると発想やアイデア、人間のソフトの部分が重要になってくる。『アンドリューNDR』のテーマとも結びつくが、機械や技術、コンピュターが進歩するほど、人間の人間の人間らしい部分が不可欠な時代に入ってくる。
 2001年はITの時代になるのだろうが、技術に負けないあっと驚くような意外な映画を観てみたいものである。