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ピッチ・ブラック               オフィシャル・ホームページ
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 ファースト・シーンから、ラストまで、息つく暇のないほど、高い緊張感が維持される。これだけ緊迫した映画は、最近見たことがない。単に敵が暗闇に潜むエイリアンだけではなく、行動予測不可能の凶悪犯リディックの設定は絶妙である。敵は外だけなく、内にもいる。リディックが敵か味方かという疑問が、最後まで緊迫感を維持させるのである。つい、『11人いる』を思い出だしてしまった。 4.jpg (13801 バイト)
 そして、独特の映像世界。B級SF映画ではあるが、そのデザイン・センスはA級である。とんがった山の風景。太陽電池と風車を合体させたようなレトロなデザインの建物。そして、宇宙船が不時着した時にできた溝の映像は圧巻である。意外さと絵的な美しさがある非常に魅力的な世界が描かれる。
 太陽が三つある世界。セピア色だったり、黄色かがっていたり、単にフィルタをかけただけの絵が、奇抜な映像世界を作る。『ピッチ・ブラック』の映像センスは素晴らしい。
 CG技術が進歩する一方で、CGで描くべきアイデアが貧困な映画が多いことは、『トイ・ストーリー2』でも指摘した通りである。そうした意味で、『ピッチ・ブラック』はCGをうまく使った映画の一本といえるだろう。
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奇抜で美しい映像世界。
 CGはこう使うべきだ ! !
注 以下、ネタバレあります。

 ただし、唯一不満がある。

 ラストである。キャロリン・フライ役のラダ・ミッチェルが実に良い味をだしていた。にもかかわらず、最後にやられるところが実にあっけない。いや、別に主役が死んだからといって、目くじらをたてるほど、私は小物ではない。ただ、あまりにも、あっけなすぎのだ。リディックの犠牲となって死んでいくフライ。彼女のおかけで、残りの三人は、無事惑星を脱出することができる。尊い犠牲である彼女の死を、もっと感動的に描いても良かったのではないか。
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 次に死ぬのは誰か。
 緊迫感につつまれたまま映画はラストまで突っ走る。
 ラスト・シーンにかかわらず、『ピッチ・ブラック』で、キャラが死んでいくシーンの演出があまりにも淡白である。古物商の男やニセ警官のジョンズ。それぞれのキャラクターは実に生き生きとして、そして人間臭くて良いのだが、死に様があまりにもあっけないのである。もっと劇的に演出して欲しかった。
 特にフライの死ぬところでは、『ポセイドン・アドベンチャー』の神父の犠牲なみに、涙ものの演出をしてほしかった。それさえあれば、もうこの映画は超傑作になりえたというのに。
 惜しい。本当に惜しい映画だ。でも、正直言って脚本はかなりうまい。監督のデウィッド・トゥーイは、注目すべき監督といえるかもしれない。
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キャロリン・フライ役のラダ・ミッチェル。良い味出してます。