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ソウ完全解読

 

■ 映画の文法1  例の法則 「一度あることは、二度ある」

 映画の重要な原則がある。
 それは、映画で一度説明されたことは、変更が示されない限り、その原則が貫かれるということだ。

 例えば、「アイ、ロボット」。
 ファースト・シーン。スプーナーのロボットに対する不信が印象的に描かれる。
 つまり、「スプーナー=ロボット不信」という標識が提示された。
 観客はこの標識に従って、運転していかなくてはいけない。
 
 しかし最後には、スプーナーとサニーの間で友情が生まれる。
 「スプーナー=ロボット不信」の標識は、覆された。
 観客の基本認識を180度変えなくてはいけない。
 
 そのためには、観客にわかりやすく「スプーナーとサニーの間で友情が生まれました」という描写を周到に描く必要があり、実際映画ではそれをやっている。

 「スプーナーは、ロボット嫌いを装っているけど、本当は好きなんじゃないか?」
 それは、観客の勝手な解釈である。
 ファーストシーンの「ロボット嫌い」描写を忘れている。
 あくまでも、「スプーナーがロボット好き」になる明確な理由、根拠が示されるま
では、「スプーナーはロボット嫌い」として理解するのが、映画の約束である。

 ここに10キロの長い道路がある。
 最初に「時速50キロ」の速度制限の標識が出た。その後は、標識がない。
 その場合は、ずっと最後まで「時速50キロ」で走りなさい、というのが映画の約束
である。
 そして、「時速40キロ」に変える場合は、「必ず」標識が出るのである。
 出ない場合は、「時速50キロ」ということ。

 だから、実生活とは少し考え方が異なる。
 実生活だと、しばらく速度標識がないと、「まあいいか」と好きな速度で走ってしまう。
  
 観客は忘れっぽいもので、半分くらい過ぎたところで、映画の序盤に提示されていた標識を忘れ去り、自分の勝手な解釈を始める。
 そうすると、映画の道筋から、どんどん外れていくのである。

 二度あることは、三度ある。有名なことわざである。
 
 映画では、「一度あることは、二度ある」である。
 本当であれば、同じことを二回描写して三回目はどうなりますか? というのが親切。 もちろん、同じ結果になるということ。

 しかし、映画は二時間弱と短い。二回例を出す暇がない。
 したがって、一例を出して、類似のシュチエーションがある場合、同じように解釈
してください、というのが「例」の法則である。
 したがって、たった一回の「例」しか示されていなくても、二回目は、その「例」
に従って解釈する必要があるのである。

 二回目が、一回目の「例」に反するからおもしろいという場合もある。 
 その場合は、セリフや映像で、一回目のパターンとは反対に解釈せよと、明確に示される。示さなくてはいけない。
 そう示されない限り、一回目の「例」を守りなさい、ということである。

 

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