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ソウ完全解読

 


 ジグソウ(ジョン)とゴードンの接点は、劇中では一シーンしかない。
 ゴードンがレジデント(研修医)に、ジョンの腫瘍のレントゲン写真を説明するシー
ンである。
 
 つまりこのシーンに、ジグソウがゴードン医師をターゲットに選んだ理由、すなわ
ちゴードンに恨みをいだく理由が描かれているはずである。

 さて、ここまで言ってまだわからない人がいれば、それは共感がたりない。
 ジョン(ジグソウ)への共感である。

 ゴードンは、レジテントに向かって、淡々と病気の説明を始める。
 この患者は、脳腫瘍患者で結腸が原発巣である。この患者は・・・・。この患者は
・・・・。
 あたかも、「物」でも扱うかのように、「患者」「患者」と繰り返す。

 それを聞いていてカチンときたゼップは言った。

 「彼の名前は、ジョンですよ。とてもおもしろい奴ですよ」と。

  いいから黙っていろよ、とでもいうかのようなウザイ表情をしたゴードンは、
ゼップを退けて説明をする。
 「この患者は・・・」と反省する様子は全くない。
 このシーンで、ゴードンは合計6回「この患者(the patient)」という言葉を使って
いる。

 なぜ、ゼップは間から、余計な口をはさんだのか?
 それは、患者を人間として扱わないゴードンの言い方にカチンときたから。
 だから、ゼップの「とてもおもしろい奴(very interesting person)ですよ」とい
う言葉が効いてくる。
 彼は「人間」なんですよ。我々と同じ。
 もっと、「患者」を「人間」として扱ってくださいよ。
 
 ゼップはそう伝えたかったはずだが、ゴードンは露骨にいやな顔をする。

 ゴードンは、「患者」という呼び方を変えようとせず、むしろ逆に、「患者」にア
クセントを置いて、ゼップに反発するのである。
 ゴードンは、ジョンが寝ていて、聞いていないだろうと思っただろうが、ジョンは
起きて聞いていた。
 ラストのネタ明かしのシーンで、ベッドに横たわるジョンが薄目を開けていた一
カットがインサートされている。
 これが、ジョン(ジグソウ)がゴードンをターゲットに選んだ理由である。

 あなたは、末期癌患者です。
 あなたの主治医があなたの目の前で、「この患者は脳腫瘍だから、今は元気だけど、もう先は長くないんだよね」と、言っていたら・・・。
 「患者」「患者」と非人格的な「物」として扱っていたとしたら?
 ショックを受けるでしょう? もっと配慮して欲しいと思うでしょう?

 実際、こういう医者は多い。特に外科医に。
 
 医者たるもの、患者さんに対する態度には、十分な配慮をすべきでしょう。
 私も、肝に銘じておきます。
 
 ゴードンには、患者さんに対する配慮がなさ過ぎた。

 

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