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ソウ完全解読

 

■ 「エスケープ・フロム・LA」の引用
 
 言うことを聞け。お前に、既に毒を飲ませた。
 言うことを聞かないと死ぬぞ。
 任務を完了したら、解毒剤をやる。

 これは、ジョン・カーペンター監督の「エスケープ・フロム・LA」の引用である。
 カーペンターのファンであれば、すぐに気付いただろう。 

 とはいっても、普通の人は、こんなB級映画は見ていない。
 ストーリーを説明しておこう。

 伝説のアウトロー、スネークは監獄と化したLAから、大統領の娘が持ち出した国家防衛機密の奪還を依頼される。スネークは、それを断る。しかし、スネークは神経破壊ウィルスを注射される。10時間以内に任務を遂行しなければ、ウィルスにより死亡するという。 任務が成功すれば、解毒剤を射ってもらえる。
 しょうがなく、スネークは任務へ赴く。そして、任務は成功。
 そして、解毒剤の注射を求める。
 しかし、ウィルスというのは真っ赤な嘘だった。
 任務が失敗しても、スネークは死ぬことはなかった。
 まんまと騙された、というオチである。

 さらに、この「エスケープ・フロム・LA」は、同じくカーペンター監督の
「ニューヨーク1997」のセルフパロディになっている。
 「ニューヨーク1997」では、監獄島と化したNYマンハッタン島に不時着した大統領
を救出する任務が与えられる。
 それを拒否するスネークは、首に注射を打たれる。超小型の時限爆弾である。
 24時間以内に大統領を救出しないと、頚動脈が吹き飛んで即死するという。
 大統領を救出して戻ってくれば、時限爆弾を解除するという。
 スネークは、ギリギリのところでタイムアウトしてしまう。
 しかし、爆弾は爆発しない。
 結局、爆弾の話は嘘だったのである。

 スネークは二度も騙されて、踊らされたのである。超ヤリ手のスネークが。
 これは、ジョン・カーペンターのファンであれば、誰でも知っている話である。

 そして、「ソウ」のワン監督は、最も影響を受けた監督の一人として、ジョン・
カーペンターの名前を挙げている。

 どうみても、ゼップの毒の話は、カーペンターの引用である。
 そして、二度とも、毒でも爆弾でもなかったというオチがついている。

 三度目は、どうか?

 ゼップの毒は、本物だっただろうか?

 本物のはずがない。
 
 カーペンターの引用なのだから、オチも引用しているはずである。
 そうじゃないなら、カーペンターを引用する意味はなくなる。

 このラストシーンのめまぐるしい種明かしの中では、毒が本当だったかどうかな
ど説明不能。
 だいたいにして、ゼップは死んでいるので、その種明かしは無意味である。
 
 映画では直接は説明されない。
 しかし、カーペンターファンには通じる。

 「ああ、これは本当は毒じゃないんだよね」と。
 カーペンターファンだけに、通じる言語で描かれているのである。

 そこが、映画作家であり、熱狂的な映画ファンであるワン監督らしい。
 とっても、しゃれた仕掛けなのだ。


 

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