ソウ完全解読 |
■ 限界状況の人間が正常な判断ができるのか? さて、そうした何時間後に死ぬかもしれないという状況において、人間は沈着冷静な判断と行動ができるのだろうか? できるはずがない。 普通の人間であれば、思考停止してもおかしくない。 「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のように、ただ絶叫するだけ。 それが、普通の対応であろう。 私は精神科医として不安状態の患者さんを山ほど見てきているが、不安な人というのは何も考えられない。 例えば、そうした人に「入院した方が良いですよ」と説得するのだが、「ええ、ど うしよう、どうしよう」「どうしたらいいんだろう」と、何十分も同じことを言い続けている。 私との会話も、トンチンカンで成立していない。 自分がどういう状態にあって、入院しないと命の危険すらあることも理解できない。それが「不安状態」である。 自分のおかれた状況を冷静に分析し、もっともベストな行動を選択する。 できっこないだろう。 不可能である。 我々観客は、映画館の安全なイスに座って、死に行く人々を<人ごと>のように最前列から観察している。そして、恐怖に直面した状況でも、行動に矛盾があると、それはおかしいと厳しく指摘する。 まさに、ジグソウと同じだ。 死の恐怖にさいなまれたゲームの参加者に、冷静な思考・判断とベストな行動を要求するジグソウと。 ゴードンやアダムに、「もっと頭を使え」というのは、あまりにも残酷だ。 そうじゃないか? もっと、ゴードンやアダムの気持ちを考えてみよう。 人物に共感してみよう。 最初、真っ暗闇からスタートするというのも重要だ。 目が覚めた、真っ暗闇。そして、記憶喪失である。 自分がどこにいるかも分らない。 足には鎖があって、自由が利かない。 ゴードンは真っ暗闇の中で、意識がさめてしばらくその暗闇の恐怖におかれていた。アダムは、あやうく溺死しそうになっていたのだ。 そして、電気をつける。 カセットテープを再生する。 六時までに何とかしないと、死ぬという。 この状況で、沈着冷静に周囲を観察し、最善の行動がとれるのか? あなたには、それができるのか? |
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