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ソウ完全解読

 

 あるいは、心理学的には「マスク」、すなわち「仮面」は、ユングの「ペルソナ」
を連想させる。

 「ベルソナ」の語源は、ギリシャ演劇の仮面である。
 「ペルソナ」は、「社会的元型」とか「順応元型」といわれ、「社会に適応した態
度」である。

 我々が社会で生きる場合、ある程度、望まれた「態度」や「役割」を要求される。
それが「ベルソナ」である。例えば、どんなひょうきん者でも仕事中は、あまり冗談
も言わず真面目に仕事をする。これも、「ペルソナ」である。
 
 「死」を宣告され癌患者の場合。
 心の中では、「どうして、自分だけがこんなことに」「私は死にたくない」と絶叫
したいはず。
 しかし、それはできない。
 例えば、家族や医者に対して、ダメだとわかっていながら、「精一杯治療して頑張
ります」と言ってみたり、「残りの時間を大切に生きていきます」なんていう、優等生
的なことを言ったりする。
 
 しかし、それは心からの本音ではないはず。
 つまり、家族を安心させ、医者との対面を保つための言葉。
 外向きの顔であり、「ペルソナ」である。
 たぶん、ほとんどの患者さんは、こうした大人の対応をとる。
 
「ペルソナ」は、「影(シャドー)」を生む。
 受け入れられない「ペルソナ」は、無意識の中に追いやられ、抑圧されていく。
 そして、やがて「影」を形成していく。
 「影」は、「自分が認めたくない自身の側面」、「受け入れられない現実・価値
観」、「社会的秩序や規範から反するもの」などからなる。

 ジョンにとって「自分が認めたくない自身の側面」、「受け入れられない現実・価
値観」とは、すなわち「死に行く自分」である。
 「影」のエネルギー源は、「抑圧」、「逃避」、「恐怖」などである。 
 「影」を恐れ、そこから逃げようとすればするほど、「影」はより大きなものとなり、
「影」は積極的に活動し、自我にまで影響を与える。
 「影」に支配される、自我や人格を失うことにもつながる。
 
 「死」を受け入れられないジョンは、恐怖を感じ、それを押さえ込もうとする。
 そうすればするほど、「影」は強まる。その「影」がジョンの自我と人格を動かし、
彼を犯罪に突き動かしていった原動力と考えられるのである。
 
 たかが、「ブタの仮面」ではあるが、少し考察を深めれば、いろいろなものが見
えてくる。

 

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