[映画の精神医学]


バイオハザード
 
 (ただの感想、ネタバレあり)


 オフィシャル・ページ

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 まずは、一言「おもしろい」。
 ゲームの映画化。それだけで、「パターン化したストーリー」を連想させ、大いに期待をそぐ。しかし、『バイオハザード』はおもしろかった。ハイブ(地下の巨大な要塞化したハイテク企業)のマザー・コンピューターをダウンさせて脱出するというミッションを遂行する。ゲームによくある展開。実に単純な話。粗筋だけたどればそうなのだが、それをよくもこれほど緊迫感ある映画に仕上げたものだ。
 冒頭のマザー・コンピューターが暴走するまでのファースト・シーンのエピソードで謎ふりをしておいて、後でそれを解決する。最初は、そのファースト・シーンが謎ふりになっているということもわからなくなっている構造が巧みだ。

 人物描写もありがちなのだが、なかなか良くできていて、後半になるとそれぞれの人物が生き生きとして、駆け引きを繰り広げるところは手に汗を握る。
 主演のミラ・ジョボビッチは、カリスマ性があるというか、圧倒的な存在感を放っている。『ジャンヌ・ダルク』でのジャンヌのカリスマ性をそのまま自らのものにしてしまったかのようだ。
 『バイオハザード』を見ていると、映画というのはストーリーではなくて演出なのかとも思うが、メインのストーリーではなく、細かいストーリー、伏線の張り方などに職人芸を見出すことが出来る。

 『バイオハザード』は、『ゾンビ』(1978年、ジョジ・A・ロメロ監督)のパロディあるいは、オマージュになっている。もともとのゲームの「バイオハザード」の開発者の世代も、丁度私と同じくらいの、ゾンビに影響を受けた世代でもあるのだろう。もし、『ゾンビ』を見ていない人がいれば、是非レンタル・ビデオ店で借りて見て欲しい。最近の優れたSFXに見慣れた人たちにはそのメイクは稚拙に見えるかもしれないが、そうした視覚的なものを超えた恐怖が、ゾンビのようにゆっくりと我々観客に迫ってくる。そんな作品だ。私の生涯の映画ベストテンの一本に入れてしまうくらいの映画だから、おもしろくないばずがない。

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アクション・シーンは
なかかのもの


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脇役が結構いい



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もはやカリスマ
ミラ・ジョヴォヴィッチ

 この『バイオハザード』を作っている人たちも、『ゾンビ』が好きなんだろうなあ・・・。ドアが開いて、ゾンビがどっと押し寄せて、ゾンビにつかまれて、ゾンビの中に飲み込まれてしまうシーンは、まさに『ゾンビ』のエレベーターが開くシーンだったりして。噛まれた者がまたゾンビになるという設定、そして仲間がゾンビに変貌するという恐怖。『ゾンビ』の真似なんだけど、うまく映画のサスペンスとして取り込んでいて、全然違和感がない。
 一人一人が犠牲になりなから閉所空間から脱出するという物語は、『ポセイドン・アドベンチャー』(1972年)にも重なるし、犬が猛烈な勢いで襲ってくるところは『ザ・ドッグ』(1976年)だったり。70年代の映画のオマージュになっているのは偶然なのか・・・。この映画の作り手が、映画好きだっていうのは間違いないだろうなって。それが良く伝わってくる。  

 さて、『ゾンビ』というと、救いのないラストシーンが印象的なわけだが、果たして『バイオハザード』のラストシーンはどうなるんだろうか? という疑問が、映画の後半に近づくに連れて、脳裏をかすめるようになる。まさか、『ゾンビ』みたいな破滅的なラストシーンはできないでしょう、と予想する。やっぱり、ハッピーエンドで一件落着するのが、最近の傾向かなとか・・・。

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あまり有名な『ゾンビ』の
エレベーターのシーン

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『ポセイドン・アドベンチャー』
の一シーン
これと似たシーンが『バイオハザード』にもあったね

 しかし、やってくれました。凄いラスト。『ゾンビ』に負けるとも劣らない。破滅的。しかし、ミラジョヴォヴィッチ演じる主人公は、凛として力強く立つ。当然、続編を念頭に入れたラストなのかもしれないが、破滅のカタルシスというのを味あわせてくれる。
 というわけで、『バイオハザード』は、おもしろいぞ!!

 

シカゴ発 映画の精神医学
アメリカ、シカゴ在住の精神科医が、最新ハリウッド映画を精神医学、心理学的に徹底解読。心の癒しに役立つ知識と情報を提供ています。
 人種、民族、宗教などアメリカ文化を様々な角度から考察。
 2004年まぐまぐメルマガ大賞、新人賞、総合3位受賞。
(マガジンID:0000136378)

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