[映画の精神医学]



ドリーム・キャッチャー
 
 オフィシャル・ページ
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『ドリーム・キャッチャー』というよりは、「UFOキャッチャー」と言った方が、ストーリーをよく表すかもしれない。過去の作品キング作品の総決算という感じ。あるいは、過去のSF映画やホラー映画のパロディ満載映画である。この映画をどう理解するのか、最初はちょっと苦しむかもしれない。
 スティーブン・キングやいくちかの映画作品についての若干の知識なしでは、『ドリーム・キャッチャー』は楽しみづらい映画になっている。その辺の予備知識を整理したので、映画の理解の参考にして欲しい。

 しかし『ドリーム・キャッチャー』は、ホラー映画、SF映画としてみるよりは、『スタンド・バイミー』と同種の青春映画、あるいは友情もの、として楽しむのが良いのだろう。失われた青春時代を取り戻すとともにそれを清算し、人生をやり直すための冒険譚である。クライマックスのグレイとの対決シーンは、『サイン』のように拍子抜けであるが、『サイン』同様に、「グレイ」というのは、一つの比喩なのである。
 我々は、少年時代に持っていた生き生きとした気持ちを失ってはいないだろうか? それを取り戻すため、そしてそれ(過去の思い出への回顧)を乗り越えて、新しい未来を築くためには、いろいろと戦い、乗り越えていく必要があるよ、というスティーブン・キングの賛歌として見ると、『ドリーム・キャッチャー』は心に染みる良い映画に見えてくる。

 

過去のスティーブン・キング作品
スタンドバイ・ミー 四人の少年の思い出話。少年時代のちょっとした冒険譚。
鉄道を横断するあたりがそっくり。
シャインニング 雪で交通が閉ざされたところに閉じ込められる。
乗り移ってその人物をコントールする敵と戦う。
グレイに乗り移られたジョーンジーの行っちゃってる目が、ジャック・ニコルソンの目つきとそっくり。
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グリーン・マイル 神に授かった特殊能力
IT メイン州デリーに潜むITと対決した7人の子供たち。
20年後、再度現れたITと対決すべくデリーに集まる。

「不眠症」「骨の袋」なども、デリーを舞台にしている。キングが作り上げた架空の田舎町がデリーである。

 

過去の映画等の影響  
スクービー・ドゥー  ダディッツがいつも持ち歩いていた黄色バッグのデザインが『スクービー・ドゥー』。
 1969年にスタートし、22年間続いたアメリカの人気テレビ・アニメシリーズ。主人公の犬スクービー・ドゥーと四人の仲間が、全米横断の旅の先々で魔女、幽霊、怪物などの怪奇事件を解き明かしていくという物語。
 2002年に実写で映画化された。
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 実写版「スクービー・ドゥー」
エイリアン  赤いカビによる感染症が、「リプリー」と呼ばれる。
 リプリーとは、『エイリアン』のシガニー・ウィーバー演じる主人公の名前。

 グレイの幼虫のデザインが、『エイリアン』 の影響を受けている。幼虫の飛び掛ってくる動き、成虫が口をあけてから攻撃をしかけるところなど、細かい動作も似ている。
Xファイル ザ・ムービー  突如勃発した謎の感染症(原因はエイリアン)。その感染を防ぐために出動する、エイリアンと戦い続ける謎のエージェンシト。エージェント内の仲違いもあった。
遊星から物体X  氷で閉ざされた基地内で、次から次へと乗り移るエイリアンと戦う話。
サイン  昔聞いた、意味不明の言葉(「イースター・ゲイ」)が、未来の出来事を示す特別な言葉であったことが、判明する。
 『サイン』では、「神の掲示」がテーマになっていたが、『ドリーム・キャッチャー』では、神(?)から与えられた恩恵(特殊能力)の話である。
 ちなみに、劇中に出てくる「ギフト・贈り物(gift)」という言葉には、「神から授けられた恩恵」という意味がある。
プロミスト・ランド 青春の絆  (1988年)  冒頭部の、小屋での雑談の中に登場する映画。
 メグ・ライアンの初期の作品として重要かも。
 主人公が、人生をやり直す為に、自分の青春を取り戻すために、故郷に戻る話し。

「その根底にあるのは、再びヒーローになるチャンス、少年時代以後無縁だった人生を生きなおすチャンスをつかんだ友達同士に関する感動的なストーリーなのです」(ローレンス・カスタン監督、『ドリーム・キャッチャー』について語る)

 少年時代、青春時代の回復。新たな人生への希望というテーマは、共通する。

 

タイトル ドリーム・キャッチャーの意味
 ドリーム・キャッチャーの意味については劇中で説明されているので書く必要がないと思ったが、某掲示板を読んでいて、「ドリーム・キャッチャーについて最後まで説明がないのガッカリした」といった、感想があったので、念のため解説しておこう。
 ドリーム・キャッチャーの形、一つの輪を中心に四つの輪が取り囲む。中心の輪はダディツツ、四つの輪は四人の仲間を象徴している。すなわち、ダディッツと四人の仲間の協力関係の視覚的象徴が、ドリーム・キャッチャーである。
 ドリーム・キャッチャーが悪夢を取り払うように、彼らは協力してグレイの侵略の悪夢を取り払うのだった。


ドリーム・キャッチャーとは(一般的知識)
「昔、インディアンの人々は、棚の下にある大きな蜘蛛の巣を発見し、夢や人生におけるすべてのこ事はその蜘蛛の巣を通過してくるものと考えた。良い夢(事)は夜の空気と共に巣を通過し眠っている者のもとに届けられ、悪い夢(事)は巣に絡め取られて夜明けと共に太陽の光を浴び消えてしまうと信じていたのだ。そこで、信仰の対象として蜘蛛の巣をかたちどり、身近な素材で思いを込めて作ったのがドリームキャッチャーだ。今日まで「悪運を払って幸運を呼び、夢を実現する」お守りとして、伝統的に伝えられている。」 (オフィシャル・ぺージより引用)

 

シカゴ発 映画の精神医学
アメリカ、シカゴ在住の精神科医が、最新ハリウッド映画を精神医学、心理学的に徹底解読。心の癒しに役立つ知識と情報を提供ています。
 人種、民族、宗教などアメリカ文化を様々な角度から考察。
 2004年まぐまぐメルマガ大賞、新人賞、総合3位受賞。
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