[映画の精神医学]


アンドリューNDR114 

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 アンドリューの表情。これが絶妙である。ロボットであるが、実に豊かな表情を見せる。人間の皮膚などつけなくても良いほどに。その微妙な表情の変化と、動きによって大きなドラマが語られていく。大きなドラマとは言っても、ほとんどが一軒の家の中のシーンである。そこを舞台に、愛、自由、人間、人生、生きる意味、時間、死という、人間にとっての根源的なテーマが次々と語られていく。
 そして、絶妙なタイミングで流れる音楽。素晴らしい。
 涙。涙。涙。こんなに泣ける映画が、今まであっただろうか。
 これでもか、これでもかと来るわけだが、アンドリューの存在自体が、それが嫌味にならないよう緩和している。映画全体にほんわかとした雰囲気が流れる。予告編を見ただけでも、目に涙が浮かびそうになる。癒しの映画とでも言おうか。
 日常生活の中であまりにも当たり前の、生きている感じとか、愛とか、自由とか、そうした実感できないものを、ロボットのアンドリューを通して、具現化してくる。生きている。それだけで非常に素晴らしいことなんだ。そんな感覚と元気を与えてくれる映画である。
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 ロボットなのに、なぜこんなに表情が豊かなのか。ロビン・ウィリアムスの演技は、奇跡である。

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 アンドリューが木馬を作るシーンは、涙、涙である。
 

 アンドリューはなぜ、仲間を探す旅に出たか?
 富と自由を獲得したアンドリュー。その彼が何をしたのかというと、彼と同じタイプのNDRタイプのアンドロイドが、どうなっているのか、一台一台探す旅に出ることだった。なぜ、彼はそんな旅に出たのか。それは、彼と同じように感情を持ち合わせたアンドロイドがいるのではないかという期待のためである。ではなぜ、彼には同類が必要だったのか?
 「人間」とは、「人の間」と書く。人間は一人では生きていけない。人と人の関係があって、はじめて人間なのである。一人で生きていくことの孤独を知り、他者との関係性を切望するようになったアンドリューは、もはやロボットではなく「人間」に進化していたのである。その彼が、自分とともに生きていく仲間を見つけたいと思ったのは、実に自然な感情と言える。

 郷愁を誘うSF映画のエッセンス 
 ロボットと人間の共存。そんなテーマは、いまさら古臭いと思う人が多いかもしれない。しかし、『アンドリューNDR』は、今だから映像化が可能になった作品でもある。CGなSFXの技術が飛躍的に進歩する昨今、それらの技術をいかに使っていくかという問題が生じている。『トイ・ストーリー2』のページでも問題提起したように、技術を使いこなす映画よりも、技術に使われる映画の方が多いことは問題である。そうした点において、『アンドリューNDR』のCGやSFXの技術は、実にうまいといえる。未来のニューヨークやサンフランシスコの都市。最新の乗り物と、昔ながらの電車が共存している奇妙な近未来をCGをうまく使い、見事に作り上げている。これが観客のイメージを刺激する映像である。アンドロイドの部品や人工臓器のシーンも、かなり手間がかかっているはずだが、あまり嫌味にならないように、さらりと見せてしまう。これこそが、正しいSFXのありようではないか。
 『アンドリューNDR』には、SFファンが喜ぶようなエッセンスが詰め込まれている。「ロボット三原則」など、最近の若者は全く知らないかもしれないが、昔ながらのSFファンには知らないものはない。アシモフの原作であるという片鱗が現れている。
 アンドリューと少女との触れ合いは、『フランケンシュタイン』を思い出す。哀愁漂う外観。武骨なから親しみ深い動作が、フランケンシュタインとオーバーラップする。
 「死なない苦しみ」というテーマは、吸血鬼映画で、今まで何度も映画化されてきた。最近では、『インタビュー・ウィズ・バンパイア』などを思い出す。
 未来都市の空中を乗り物が飛んでいるところは、『スターウォーズ エピソード1』みたいだ。
 近未来映画でありながら、なぜか懐かしい。それが、『アンドリューNDR』である。

 もう一回見に行きたいなあ・・・。

 原題は、「Bicentennial Man」(200年人間)。一台のロボットの、人間になるための200年のたぐい稀な道のり。それが、「Bicentennial Man」である。

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 アンドリューは仲間を求めて旅に出る。


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 少女とのふれあいは、『フランケンシュタイ』を思い起こす。


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 200年にわたる壮大な物語。凄いスケールの話だ。


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 暖かい家族によって育てられると暖かい人間に育つ。そんな性善説が、『アンドリュー』には流れている。

 

 

シカゴ発 映画の精神医学
アメリカ、シカゴ在住の精神科医が、最新ハリウッド映画を精神医学、心理学的に徹底解読。心の癒しに役立つ知識と情報を提供ています。
 人種、民族、宗教などアメリカ文化を様々な角度から考察。
 2004年まぐまぐメルマガ大賞、新人賞、総合3位受賞。
(マガジンID:0000136378)

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