ダイナソー

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子供に見せるべきテーマがそこにあるか? 

 「みんな仲良く。協力し、団結すれば、不可能も可能になる。」そんな素晴らしいテーマを持って『ダイナソー』は作られているようだ、このテーマはあまりにも甘すぎるのではないか。すなわち、ディズニー映画全てに通じる偽善の精神が、『ダイナソー』にも受け継がれている。
 アラダーたち、草食恐竜の一群は、団結によって肉食恐竜の攻撃をしりぞけ、最後には緑の楽園に到着する。明らかなハッピーエンドで物語りは終わるが、このラストに非常に疑問を感じる。なぜなら、草食動物だけの緑の楽園が実在するはずない。肉食恐竜のいない緑の楽園に到着した彼らは、無数に繁殖しつづける。結果として、豊富な緑はたちまち食い尽くされて、結果として食料不足に陥り、彼らの大半は死滅する。これが自然のおきて食物連鎖である。食物連鎖、そして弱肉強食のおきては、中学の理科でも習う、自然存在の基本である。ありもしない「楽園」を提示することで、子供たちに不可能な夢を抱かせることが正しいだろうか。
 弱肉強食。映画の序盤では、それが描かれる雰囲気も合ったが、本来勝てるはずもない肉食恐竜に戦いを挑んで、最後に草食動物が勝つという不自然極まりないラスト。
 自然とはこんなぬるいものか。現実の自然や動物の生存競争は、もっと厳しいのではないか。現実逃避の視点。嫌なことから全て目をそらして、良さそうな部分だけをつまみ食う。これをディズニー映画の伝統と考えれば、『ダイナソー』はそれを踏襲しているだろう。
 弱肉強食と食物連鎖の厳しさが見事に描かれていた『スター・ウォーズ ファカトム・メナス』も、同じ子供向け映画ではないか。
 そうした意味で、生きるか死ぬかの厳しさを描いたという意味で、『バトル・トロイヤル』の方が、はるかに教育的といえるかもしれない。

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みんな仲良し
しかし、その後に来るものは・・・


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唯一の見所は冒頭の
俯瞰シーン

 

『ダイナソー』 の聖書的解釈

 『ダイナソー』は、聖書に基づいた話である。
 「緑の楽園」という夢の楽園をめざして砂漠を大移動する恐竜たちを見て、「約束の地」をめざして砂漠を大移動したヤダヤ人、すなわち旧約聖書の「出エジプト記」を思い出した。最初は偶然の一致かと思ったが、そうではなかった。「出エジプト」そのものと考えられるシーンが登場した。アダラーたちが水を掘り当てるシーンである。
 緑の楽園を信じて砂漠を強硬に突破しようとした草食恐竜の一団。しかし、のどが渇き、年老いた恐竜たちは進めなくなる。そこで、アダラーは、足で土を踏みしめる。そして、さらに何度か土を踏む。するとそこから、水があふれてでくるのだ。
出エジプト記17.1-7「岩からほとばしる水」そのもののエピソードである。聖書の一節を要約しよう。
 「モーセに率いられた一行は、シンの荒れ野を出発し、レフィディムに宿営したが、そこには民の飲み水がなかった。民たちは「我々に飲み水を与えよ」と不平をもらす。モーセは主に助けを求めると、主は言った。「ナイル川を打った杖を持って、主が立つ岩を打て。そこから水が出て、民は飲むことができる。」モーセが主の通りにすると、岩から水があふれ出た。
 杖で岩をたたくとそこから水が湧き出てきたのだ。恐竜の足で砂地をたたく(踏みしめる)、「杖」が「恐竜の足」にかわっているだけで、イメージ的にはほとんど同じである。

 そうなると、くずれ落ちる洞窟の岩石は、エリコの壁ということになる。
 モーセは約束の地にたどり着くことなく死に、後継者ヨシュアがユダヤの民をを率いる。イスラエル(約束の地)で最初にたどり着いた都市(征服した都市)が、エリコである。ヨシュアはエリコの町の周りをアークをかついで七日間周り、角笛を吹くとエリコを囲んでいた巨大な城壁が崩れ落ち、エリコを占領することができたのだ。エリコは乳と蜜の流れる土地、すなわち緑豊かな土地であるという意味で「緑の楽園」と同意である。
 巨大な洞窟の石壁に行く手を阻まれたアラダーたちは、壁に体当たりをすることで壁を崩す。崩れた壁の向こうに、緑の楽園が広がっていた。エリコの壁が崩れて、エリコ(乳と蜜の流れる土地)に到達したヨシュアたちと同じである。
 

 2億4千万ドルという巨大な予算を投じて作りあげたドラマは、恐竜のドラマに戯画化されたユダヤ人の歴史だった。

 

 

シカゴ発 映画の精神医学
アメリカ、シカゴ在住の精神科医が、最新ハリウッド映画を精神医学、心理学的に徹底解読。心の癒しに役立つ知識と情報を提供ています。
 人種、民族、宗教などアメリカ文化を様々な角度から考察。
 2004年まぐまぐメルマガ大賞、新人賞、総合3位受賞。
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