[映画の精神医学 HOME]

ソウ完全解読

 

■ 癌患者の心理

 「映画の精神医学」なので、心理学的な話も入れなくてはいけない。
 この映画をきっかけに、末期癌患者の心理について、少し勉強しておこう。

 癌患者の心理の研究としては、精神科医キューブラー・ロスの「死ぬ瞬間」が有名である。
 1960年代に200人もの癌患者をカウンセリングし、その経験と観察から、癌患者の心理をまとめた本である。
 古典である。精神医学の世界では、超有名な本だ。
 興味のある人は、是非読んで欲しい。
http://www.kabasawa.jp/eiga/page/book4.htm

 ロスによると、癌患者は癌告知されたあと、否認・怒り・取引・うつ・受容のプロ
セスをとるという。
 簡単に説明しょう。

 まず最初に、自分が癌であることを否認する。
 つまり、「自分が癌になるはずがない」とか「この医者は誤診しているに違いな
い」という感情が生まれる。
 しかし実際、癌であることが確からしいということになると、認めざるを得なくなる。
 
 そして、「怒り」の段階に入る。自分だけが死ななければならないことに対する怒りや、生き続ける健康な人々ヘの羨望、恨みなどのさまざまな気持ちが現れる。

 次に、「取引」の段階。これは「交換条件」のようなもので、神仏や超自然な力
に対して何らかのお願いをして約束を結ぶ。例えば「病気が治るならば、自分の財産を寄付してもよい」といった考えである。

 しかしこのようにあがいていみても、体調はおもわしくなく、癌であること、自分
の行く先が長くないことを実感せざるを得ない。そうすると、気分が落ち込み
「うつ」的になる。

 しかし、そうした心の揺れ動きの中で、最終的には死を「受容」し、安らかに死んで行く。

 これは、全ての患者がこの五段階を順番にたどるということではなく、あくまでもモデルである。
 ある患者は、「怒り」を前面に出すかもしれないし、別な患者は「うつ」の後すぐ
に「受容」するかもしれない。

 ここまで読めば鋭い人は、これはジョンの心理に当てはまると気付くだろう。

 癌患者はその経過中に、自分が癌になった責任を他人におしつける傾向がある。
 つまり、「この医者がヤブだから、癌の発見が遅れたのではないか?」と考えたり、「きちんとした治療をしなかったから、癌が広がったったに違いない」と癌に
なった責任を人に転嫁しやすいいということだ。
 
 ましてゴードンは、ジョンを「患者」という「物」のように扱った。
 まさに、渡りに船である。

 「この医者のせいで」「こんな医者のせいで・・・」
 ジョンのゴードンに対する過剰な「怒り」の反応は、癌患者の心理にてらして、全く妥当なものである。

 

まとめて読みたい方は、読みやすいPDF版
「ソウ完全解読」をこちらからダウンロードしてください。


[映画の精神医学 HOME]

 

関連サイト
[ブログ シカゴ発 映画の精神医学]
[精神医学・心理学本の全て]
[激辛カレー批評]
[カレー本の全て]
[スター・ウォーズ研究誌 ホスプレス]
[樺沢紫苑の世界へ]
[必ず役に立つ無料レポート]
[毎日50人 奇跡のメルマガ読者獲得法]