「シカゴ発 映画の精神医学」

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1号

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       シカゴ発 映画の精神医学

  ●第24号●   2004年11月30日発行              
 
    発行者 :    樺沢紫苑 
   発行部数 :      2540部
  発行元サイト: http://www.kabasawa.jp/eiga/home.html
   
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    【 目 次 】
■1 はじめに 
■2 日本で一番早い!!  アメリカ最新映画紹介 (ネタバレなし)
           「ナショナル・トレジャー」 
■4 精神医学の目 (ネタバレなし) 日記療法、あらためブログ療法       
■3 読者の凄い解読 (ネタバレ)     「2001年宇宙の旅」    

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■1 はじめに
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 サンクス・ギビングの連休で遊びすぎてしまったため、発行が1日遅れてしまいました。
 すいません。

 サンクス・ギビングは、なかなかの盛り上がりでした。
 サンクス・ギビングのバーゲン・セールというのがあるのですが、朝6時から11時まで。
 朝、早すぎ。買い物は、家内にまかせて、私は昼から外出しました(笑)。

 クリスマスツリーの点灯式が、なかなかよかった。
 シカゴ市長も登場したし、クリスマス・ソングの合唱とか、もりだくさんで。
 まだクリスマスまで1ヶ月もあるのに、早いですね。準備が。
 クリスマスは、アメリカではかなり重要な儀式のようです。

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■2  日本で一番早い!!  アメリカ最新映画紹介 (ネタバレなし)
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┌──────────┐
  ナショナル・トレジャー      2005年3月15日公開予定 11月19日アメリカ公開 
└──────────┘
 
 ブラッカイマーのプロデュース作品にしては、おもしろい。
 あるいは、ニコラス・ケイジにしては、カッコいい。
 なんて言うとあまりおもしろそうじゃないなあ・・・。

 アクションシーンのないインディ・ジョーンズ。

 この方が、いいかな。
 
 ニコラス・ケイジ演じるトレジャー・ハンターが、フリーメーソンのお宝を探すという物語。
 そのお宝をめぐった謎解きが、なかなかおもしろい。
 
 ところで、みなさんは、フリーメーソンってご存じです?
 名前くらいは知っているでしょう。
 でも詳しく説明できる人は、あまりいないかもしれませんね。

 でも、知ってなくても全く困りません。
 劇中で、必要な知識は説明されますから。

 私は大学生くらいのときに、フリーメーソンの陰謀説に、ずいぶんとはまってフリーメーソン
と名のつく本はだいたい持っています。
 まあ、だからこの映画のディテールに関しては、いろいろと言いたいこともありますが、
公開後にまた詳しくとりあげましょう。

 メーソンについて良く知っている人にとっては、この映画の展開は予想の範疇です。
 逆に、メーソンについて知らない人が見ると、「えっ、意外」と驚くか、「何なの、コレ」と
ついていけなくなるか、どちらかだと思います。
 
 脚本自体はとてもよくできているし、恋愛感情や親子の愛情みたいな人間部分もしっかり
描けている。そして、適度な笑いもある。
 娯楽映画としては、合格点。
 1800円くらいは十分に楽しませてくれる映画といえるでしょう。
 
 ただこの手の映画で、アクション・シーンがないというのは、結構つらい。
 どうしても、展開が地味になってしまう。

 それに、ニコラス・ケイジが、カッコよすぎる。
 ダメ男の ニコラス・ケイジの方が、私は好きだ。 

 お薦めする人
・カッコいいニコラス・ケイジが見たい人
・フリーメーソンに興味津々の人
・謎解き映画が好きな人

期待はずれになる人
・俺はフリーメーソンに詳しい、という人
・アクションを期待する人

樺沢の評価 ★★★☆  (★5個が満点)

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 映画や海外ドラマからの例が多いので、映画好きのみなさんは、楽しく英語が学べると
思います。 (樺沢)

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■3 精神医学の目 
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┌─────────────┐
  日記療法、あらためブログ療法
└─────────────┘ 
 
 前回は、日記療法についてでした。
 あなたも日記をつけてみては? とお薦めしました。

 しかし、最近の人で、日記帳に日記をつけている人は、珍しいと思います。

 現代の日記。それは、「ブログ」です。
 「ブログ」は、おそらくほとんどの人は、すでにご存知でしょう。
 「ブログ」では、ホームページの知識がなくても、雛形にあわせて簡単に自分のサイトが
無料で持ててしまいます。
 自分の日記や最近の出来事をアップしている人が多いようです。

 私も、ブログをやりたいと思っていますが、このメルマガが忙しくて、ちょっと時間がありません。
 多分、そのうち始めるでしょう。

 ブログというのは、非常に「良い」と思います。
 それは、精神医学的に見て、「治療的」である、という点でです。
 「ブログ」を作って続けることは、精神的な「癒し」に通じる可能性があります。
 
 その理由は、以下の通りです。

1 自己洞察が深まる

 毎日文章を書く。
 文章を書くと洞察力が深まります。
 これは、間違いない。
 
 私も毎日、数時間。ここ十年以上、ほぼ毎日続けていますが、書けば書くほど洞察力が
深まっていくのを実感します。

2 毎日続けやすい

 しかし、日記や文章を、毎日書き続けるというのは、大変なことです。
 人に読まれない文章を書くのは、たいへんつらいわけです。
 しかし、毎日読んでくれる人がいる、と思うとやる気が出てきます。
 モチベーションが高まるということです。

 そして、ブログであれば、ホームページよりも簡単に更新できます。
 
 ブログは毎日続けやすい、ということが言えるでしょう。
 
3  自分が表現できる

 前前号の、「シャル・ウィ・ダンス」では、自分を表現することの大切さを紹介しました。
 自分を表現できるという点では、何でも良いのですが、気軽に始められて、お金も
かからないということで、ブログは非常に優れていると思います。

 「表現する」、それだけで楽しいのです。
 ブログをやっている人はわかるでしょう。
 この点は、メルマガも同じですが・・・。
 
4 トラックバックによるポジティブ・フィードバック 

 私のメルマガもそうですが、応援メールをもらうと、非常にやる気がわいてきます。

 ブログには、トラックバックという機能があって、他の人からのコメントがつきやすいのです。
 中には、「荒らし」のような人を不快にするコメントもないわけではないですが、多くの
トラックバックは、そのサイトに対する賛成意見であったり、ポジティブな建設的な意見で
ある場合が多く、非常に励まされるわけです。

 こうした、プラスの評価を受けることを、専門用語ではポジティブ・フィードバック
といいます。

 頑張ってやる→ 誉められる → 余計頑張る  

 こうした、プラスの連鎖が期待できるわけです。 

 応援のカキコミがあれば、それは自分自身の人格を誉められているのと同じように
感じられます。
 うれしくなって、ついついがんばってしまう。
 楽しく、続けられる。

 このように、ブログには精神医学的にみても、多くのメリットを持っています。
 
 使い方によっては、ある種の治療ツール。
 あるいは、自己啓発ツールになりうるのではないか・・・と、
 そんな、いろいろな可能性もありえます。

 つまり、日記療法、改めブログ療法なんてのが、登場するかもしれません。

 まあ、こんなことを考えるよりも、私もまず始めてみないとなあ・・・。

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 読者の皆さんの中には、実際に精神科に通い、心の病と戦っている方もいるかと思います。
 「映画の精神医学」でも、「癒しの方法」について常に紹介していますが、もっと具体的で
実践的な方法を知りたいという方は、『精神科医熊木徹夫の「臨床公開相談」』
http://www.mag2.com/m/0000139489.htm  をお薦めします。
 メルマガでとりあげられるのは、よくある相談内容ですから、同じような悩みを持っている人も
多いと思います。このメルマガには、たくさんの「癒し」のためのヒントが詰まっています。(樺沢)

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■4 読者の凄い解読  (ネタバレなし)
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┌─────────────┐
   2001年宇宙の旅           投稿者  Oneさん
└─────────────┘ 

 私はこの映画を何度も見た。おそらく10回以上は見ていると思う。
初めて全部通して見たのは高校生の時であった。
中学生の時一部だけ見たのだが、それからなんとしても全体を通してみたいと思い
続けていた。念願かなって全体を見通した時は、言葉には表現できないが、
大きな感銘を受けたことを覚えている。

 そもそもこの映画は言葉で表現する類のものではない。
言語や論理的な左脳よりも、感覚や直感の右脳中心で見るものである。
キューブリックも神や何らかの大いなる存在を感じることができれば、この映画は成功した
のだ、というようなことを言っている。この作品はよく難解だと言われるが、それは見なが
らごちゃごちゃと考えすぎてしまうからであろう。

 ストーリーはシンプルであり、テーマは明白である。地球外生命体の存在を確認し、
探索にいくという簡単に言ってしまえば、そういった物語である。
そしてその存在と遭遇し、次なる段階へ進化していく、もちろん人によって解釈は
違うが、私はこのように理解した。

 地球外生命体に遭遇するというと、エイリアンにでも遭遇するのか、というような
イメージを抱いてしまうが、そういったものは一切出てこない。
 神の視点から人類を見つめているだけである。
 そしてこの作品の特徴として、人類が神や超越的な存在とただ遭遇するだけでなく、
次の段階へ進化していく過程を表現しているところにあると思う。

 キリスト教では神に祈り、神の恩寵を受けるというものであるとも言えるが、
仏教やヒンドゥー教や仙道などの東洋の宗教や哲学は、人間が神となり、神をも超えて
いくことができるとし、その実践方法もある。この作品ではボーマン船長が映画の
最後で老い、病、死のプロセスをたどり、そこから新たなスターチャイルドとして生まれ
変わるところで終わる。これはキリスト教よりも、東洋の宗教や思想と一致するように思えた。

 ラストで主人公が新たに生まれ変わるわけだが、その前のディスカバリー号が木星へ
至る途中で、そのことを示唆する描写があると思った。
 これは監督が意図したものであるかはわからない。
 それは何かというと、光の中を進んでいき、その後白いものとと赤いものが空間に
広がっていた。
 これはわたしは精子と経血の象徴ではないかと思った。
 密教では、人が死にゆく時に白と赤のエネルギーが混ざり合い、次の転生へと至る
とされる。
 白いエネルギーは精子の象徴でもあり、赤いエネルギーは経血の象徴である。
 ひょっとしたらキューブリックは、意図せずして密教で説かれる内容をこの映画の中で
表現したのではないかと感じた。
 これはあくまでも私の憶測であるが、大いなる存在がキューブリックを借りて、
秘儀でもある内容を表現したのかもしれない。

 この映画は万人向けとはとても言えない。初めて日本で公開された時、家族向けの
映画と宣伝されて、見に来た人たちが非常にとまどったという話である。
 家族やカップルで見るには不向きである。
 しかし、やはりこの作品はSF映画を超えて、映画史上に残る金字塔であると思う。
 映画好きの人なら、何がなんだかわからなくても良いから、一度は見ておくべきもので
あろう。

この解読がおもしろいと思った人は、oneさんのサイトをのぞいて見ましょう。
 こちら↓↓
http://plaza.rakuten.co.jp/oneness0/

 [樺沢コメント]
>そもそもこの映画は言葉で表現する類のものではない。

 全くそのとおりですね。
 「難解」と呼ばれる映画の多くがそうであるように、感じたそののままに理解するのが、
一番正しい見方だと思います。

 したがって、言葉で説明すればするほど、本質からずれていってしまう。
 逆に言えば、映像で表現するのが最も適切であるからこそ、テーマを言語化することに
よって、ズレが大きくなっていく。
 だからこそ(映像で全てを言い尽くしているからこそ)、「2001年」は傑作なのでしょう。

 こうした理由から私は、「2001年」の解読は書いたことはありませんが、キーワードを
拾えば「進化」「人間とは?」「高次なる精神存在(Higher mental power)」「輪廻転生」
でしょうか。
 すなわち、Oneさんの解読とほぼ同じです。

 「人間とは?」のテーマについては、言及がなかったので補足しておきましょう。
 「人間とは?」 好戦的存在である、ということなのでしょう。
 ファーストシーン。猿から人間へと進化。それは、道具を使えるようになったから。
 しかし、道具を武器として使っている。コンピューターHALが、人間に反旗を翻すのも、
人間の好戦的行動パターンを学習したからでしょう。
 
 「2001年」で我々に突きつけているのは、武器や攻撃性と無縁に人間は進化できるのか?
 ということ。
 逆にいえば、性能の高い兵器を開発するためにテクノロジーを進化させてどうするの?
 精神の進化はどうなっているの? そんな感じでしょうか。
 
 人間の持つ、攻撃性や暴力。「博士の異常な愛情」や「時計じかけのオレンジ」にも、
通じるテーマです。「2001年」がどうしてもわからないという人は、その他のキューブリック

作品を見ると、テーマはおのずと見えてくると思います。

 なんだ、ずいぶんと言葉で説明してしまった(笑)。

 みなさんも、「凄い解読」に投稿しませんか。
 すでに、みなさんのサイトやブログにアップされているものと、同じものでも構いません。
 投稿規程は、コチラ↓↓↓
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 なお、掲載者への特典が一つ増えました。
 「シカゴ発 映画の精神医学」のリンク集に加えさせていただきます。
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 これにより、継続的にサイトの紹介ができます。


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       シカゴ発 映画の精神医学

  ●第23号●   2004年11月25日発行              
 
    発行者 :    樺沢紫苑 
   発行部数 : 2437部
  発行元サイト: http://www.kabasawa.jp/eiga/home.html
   
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    【 目 次 】
■1 はじめに 
■2 日本で一番早い!!  アメリカ最新映画紹介 (ネタバレなし)   「レイ」
■3 精神医学の目 (ネタバレなし) 
      「17歳のカルテ」  日記療法と自己洞察
■4 読者の凄い解読 (ネタバレなし)   「デイ・アフター・トゥモロー」    
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■1 はじめに
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 クリスマスが来て、お正月。日本では一年の中でも、一番盛り上がる季節ですね。
 アメリカでは、サンクス・ギビングデイがあって、クリスマス。
 そして、新年はカウントダウンするくらいで特に祝いません。
 サンクス・ギビング前から、クリスマスにかけてが、デパートなどが最も儲かる時期で、
バーゲンなども行なわれます。
 サンクス・ギビングには、故郷に帰省して家族と過ごし、七面鳥などの料理を楽しむ。
 つまり雰囲気的には、日本のお正月が、サンクス・ギビングにあたります。
 
 ということで、明日からサンクス・ギビングの4連休。うれしいなあ〜。
 「ソウ」の最終号を発行して、ちょっと書きたかったある作品の映画分析を書こうかなと
思っています。あと、「アレキサンダー」も公開されるな・・・。
 といういうことで、楽しみな連休です。
 
 シカゴは、今日、初雪がふりました。
 みなさんも、風邪を引かないよう、注意してください。

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■2  日本で一番早い!!  アメリカ最新映画紹介 (ネタバレなし)
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┌───────────┐
   レイ                 10月29日アメリカ公開
└───────────┘
 
 盲目の天才シンガー、レイ・チャールズの人生を描いた伝記映画である。
 レイは、今年六月に亡くなった。
 映画の公開は、グッドタイミングだが、製作はそれ以前から進められていたのだろう。

 私の感想は、「これぞ、映画だ」。
 
 音楽映画というと、どうしても「音楽」映画になってしまう。
 つまり、映画の文法を無視し、音楽を聞かせるフィルムという。

 「レイ」は、間違いなく「映画」である。

 一人の人生をわずか二時間(この作品は、三時間ほどあるが)前後で描くということは
不可能である。 
 ある部分にスポットをあてて、ある部分はバッサリと切る。
 それでいて、その主人公をイキイキと、そしてリアルに描かなくてはいけない。
 それが映画のやり方。

 実在の人物を描いていながら、ある種の「フィクション」なのだ。
 しかし、「フィクション」であるからこそ、ズームアップしたその一点に関しては、
「ノンフィクション」以上に感動的に伝えることができる。

 「レイ」では、彼の子供の頃のトラウマの克服。
 そして、母との関係性の回復が、隠れたテーマになっている。

 幼少時代の回想シーンが、彼のミュージシャンとしての活躍の合間に挿入され、
単なる「伝記」というよりも、「人間レイ・チャールズの心の闇に迫る」作品となっている。
 そこが、大きな見所。

 この映画には、彼の輝かしい活躍はあまり描かれていない。
 アメリカ人の観客は、レイ・チャールズの活躍など、百も承知なのだから、描く必要
はないのだろう。
 
 逆に、彼の輝かしい成功の裏の苦悩。あるいは、ドラッグとの闘いにスポットが当て
られる。単に目が見えないということだけではなく、さらに深い「心の闇」を描いたのは、
凄いと思う。
 
 人物描写がこれほどしっかりとした映画というのは、なかなかない。

 大変感動したが、私は音楽には疎く、レイ・チャールズに特別な思い入れがある
わけではないので、涙を流すまではいかなかった。
 でも、私の隣にいた、五十歳くらいのおじさんは泣いていた。
 場内の三人に一人くらいは、泣いていたのではないか。

 この映画は、レイ・チャールズに思い入れのある人ほど楽しめる。
 そして感動できる。
 そして、泣けるのである。

 もちろん、レイ・チャールズをあまり知らない人でも、十分に楽しめるだろう。

 お薦めする人
・レイ・チャールズのファン (必見です)
・人物描写のしっかりとした映画を観たい人

期待はずれになる人
・特になし

樺沢の評価 ★★★★☆  (★5個が満点)

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買うかどうか判断」「これは買い!」の三段階の単純なレイティングもわかりやすくて
良いです。(樺沢) 

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■3 今週のイチオシDVD
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青春映画です。  
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■3 精神医学の目
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┌────────┐
  17歳のカルテ           日記療法による「自己洞察」
└────────┘ 
 
 「17歳のカルテ」は、ご覧になりましたか?
 「映画の精神医学」的には、傑作なので是非見て欲しい。

 境界型人格障害である主人公のスザンナは、精神科病棟に入院します。
 入院によって、ある程度の落ち着きを見せ始めるスザンナですが、どうにもならない衝動と、
苛立ちに苦しみ続けます。
 
 そして、つい男子職員と性的関係を持ってしまうスザンナ。
 まだ、病気はちっとも治っていなかった。

 そんなスザンナを冷水風呂に投げ込む看護婦ヴァレリー(ウーピー・ゴールドバーグ)。

 「あんたが医者のふり? カルテに、投薬も。調子に乗らないでよ。たかが看護婦でしょ」
と看護婦に詰め寄るスザンナ。
 
 それに対して、「あなたは何なの?」と逆に問いかけるヴァレリー。
 
 「あなたは何なの?」

 とても大切な問いかけです。
 
 それに対して無言となり、全く反論できなくなるスザンナ。

 ヴァレリーは、スザンナに自分自身を見つめること(「内省」「自己洞察」)の大切さ
を伝えたかったのです。
 
 人格障害、性格障害の治療では、「自己洞察」がとても大切です。
 言ってってみれば、「自分自身を見つめたくない人」が、こうした病気になるとさえ言えます。
 
 このメルマガで、何度か書いています。
 映画を見るときは、何がわからないかを明確にしよう。
 そうすれば、「答」はわかったも、同じであると・・・。

 これは、「心の病」の治療でも同じことです。
 自分のどこが悪いのか。自分の性格のどこに欠点があるのか。
 それを知ることが大切です。

 それさえわかれば、「どこを修正すればいいのか」が明確にわかります。
 それがわからないと、「治したい」と思っても、何をどう治せば良いのか見当もつきません。

 「心の病」を乗り切るためには・・・。
 「自己洞察」が極めて重要です。
 きちんとした「自己洞察」ができるようになれば、必ず治るといっても良いでしょう。

 では、「自己洞察」ができるようになるためには、具体的にはどうしたら良いのでしょうか?

 映画では、看護婦ヴァレリーは、スザンナに日記をつけるように指示します。
 そして、スザンナはそれを受け入れて、日記をつけ始める。
 日記療法の始まりです。

 日記療法は、神経症(特に森田療法の治療法として)、うつ病やアルコール依存症や
薬物存症によく用いられます。患者さんがその日起きた出来事と、それに対してどう感じた
か、そして何を考えたことを日記としてまとめるのです。
 それを主治医に提出し、主治医はコメントを書いて返却する。
 患者さんと医師の交換日記のようなもの。

 患者さん自身が書くことを通じ自分自身を見つめる。
 そして主治医は、その日記の中に現れる誤った考え方の様式、誤った行動の様式などを
取り上げて、面談の時に本人に突きつけ、さらに自己洞察、内省を進めさせる。
 日記療法は、自己洞察を進めるのに非常に有益な治療法と考えられます。
 
 私は、このシーンを見てすごい衝撃を受けました。
 境界型人格障害に日記療法というのは、実は一般的な治療とはいえません。
 しかし、「これって、良いんじゃないの?」と、思ったのです。
 
 人格障害の治療で、「内省」というのは非常に重要なのですが、それを日記療法を使うとは、
目からウロコでした。これを参考に、何人かの人格障害の患者さんに日記療法を行なって
みましたが、非常に効果的なので、さらに驚きました。
 まあ、最低でも半年以上は続けないと、ハッキリとした効果には結びつきませんが・・・。

 スザンナは「小説家になりたい」という夢を持っていたように、もともと文章が得意だったこともあり、
積極的に日記療法に取り組んでいきます。
 常に日記を持ち歩き時間があったら、記録するという熱の入れようです。
 これは、治療に対して積極的になっている、という証拠です。

 私の薬物依存症の患者さんで、日記療法に導入した人がいます。
 最初は、わずか2〜3行。それも、2〜3日に一回書くのがようやくだったのです。

 しかし、励ましながら、2〜3行でいいから毎日書くように促し、少しずつ書ける(内省できる)
ようになってきました。
 そして驚くことに、四ヵ月後には大学ノート1ページ以上、それも毎日書くようになったのです。
 ノート一冊終わるのに、3ヶ月かかかりました。
 しかし、ノートの二冊目は、1ヶ月もかからずに、終わったのです。
 その患者さんは、すぐに睡眠剤に依存してしまう悪い傾向についての認識を深め、
今まで何年にもわたり何度も薬の大量服薬を繰り返しては救急車で運ばれていたのに、
何と睡眠薬に全く頼らない生活ができるようになりました。
 信じられない効果です。

 日記療法は、自己洞察を深めます。
 これは、確かです。

 日記療法を真剣に取り組んだスザンナは、急速に自分自身を見つめる目を養っていきます。
 そして、自分の心の弱い点。自分のどういうところがダメなのかを、気付けるようになっていくのです。

 治療としての、「日記療法」は精神科医や心理師にコメントしてもらう必要があります。
 でも、そうでなくても、自分で自分の一日の行動を振り返り、それを文章にまとめるだけでも、
かなりの効果は期待できるでしょう。

 私の患者さんのように、最初は大変です。
 でも、それを乗り越えると、自分自身が間違いなく見えてくるばずです。
 
 あなたも、日記をつけてみてはどうですか?

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       ◆◆◆やる気が出ない本当の理由◆◆◆
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○  酒にタバコにギャンブル、わかっちゃいるけどやめられない。
○  嫉妬や未練、鬱、考えたくないけど考えてしまう不快な思考や感情。
○  人の行動・思考・感情には秘密があります。その秘密とは・・・
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 もっとハツラツと生活したい人に、お薦めです。(樺沢)

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■4 読者の凄い解読  (ネタバレなし)
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┌───────────┐   
   デイ・アフター・トゥモロー           投稿者 longjiさん
└───────────┘  

 「デイ・アフター・トゥモロー」について、樺沢さんは
<「自然って、たいしたことないね」というメッセージを、
我々に強く印象付けた素晴らしい映画である。>
と受け取られたようですが、
 私は丸っきり逆の感想を持ったので投稿します。
敢えて断りますが、「解読」って大仰なものではなく、感想です。

 エンディングのちょっと前。
 零下100度の超大ハリケーンが通り過ぎた後、
 宇宙ステーションの乗組員が
「珍しく地表がはっきりと見える」と言うシーンがありました。

 映画での異常気象は人間の環境破壊に自然が牙を剥いたとされますが、
そのシーンで私は別の事を思い付きました。
 あの異常気象は人間が汚した環境を浄化する為の自然の治癒能力なのではないかと。

 今更ガイア理論とかラブロックじゃないけれど。

 確かにたくさんの被害や死人にがでましたけど、
人間だって病気になれば熱にうなされるし沢山の細胞が死にます。

 「自然が牙を剥く」などの物言いは自然が人間に対抗する存在かのようですが、
 「母なる大地」と言うように自然はもっと慈愛に富んだ存在ではないかと
気付かされたシーンでした。

 樺沢さんが書かれたストーリーのつじつまやテーマについての指摘は
至極ごもっともなんですが、
多分映画を観る姿勢の違いなんでしょう、
私は、ある一シーンからだけでもいい、
自分の蒙を開いてくれるような、
新たに気付かせてくれるようなきっかけがあるととても喜ぶ人間なんで、
その点で「デイ・アフター・トゥモロー」は最高でした。

 [樺沢コメント]
 映画をボジティブに見る。
 大切なことです。
 
 私も、できるだけポジティブに見ようとしているのですが、どうしても「ちょっと」という
作品もありますね・・・。  

 私がしいて、「デイ・アフター・トゥモロー」のポジティブな点を挙げるとすれば、
やはり「家族愛」でしょうか。
 仕事をほっぽりだしても、家族を救いに行く。
 日本人として全く共感できませんが、アメリカ人はそこまで「家族愛」を大切にするのか?
 ただ、ただ感心しました。

 「凄い解読」といえば、仰々しいですが、みなさんの「新鮮な感想」や「個人的な意見」なども
載せていきます。
 とりあえず、投稿してみましょう。
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       シカゴ発 映画の精神医学

  ●第22号●   2004年11月22日発行              
 
    発行者 :    樺沢紫苑 
   発行部数 : 2338部
  発行元サイト: http://www.kabasawa.jp/eiga/home.html
   
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    【 目 次 】
■1 はじめに 
■2 日本で一番早い!!  アメリカ最新映画紹介 (ネタバレなし)
           「シャル・ウィ・ダンス」 
■3 精神医学の目 (ネタバレなし) 「シャル・ウィ・ダンス」        
■4 読者の凄い解読 (ネタバレ)     「コラテラル」    

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■1 はじめに
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 最近、シカゴもすっかり寒くなってきました。
 バスを待つのが、つらいこの頃です。
 寒くなってくると、アツアツの食べ物を食べて温まりたくなってきますね。
  
 アツアツの食べ物といえば、私は「スープカレー」を思い出します。
 みなさん、「スープカレー」って、ご存知ですか?

 北海道の方は、当然知っていますね。
 札幌では、今大ブームです。
 トロミのないスパイシーなスープ。
 そこに、チキンや野菜がゴロゴロと入った、ダイナミックな食べ物です。
 
 東京でも、「マジック・スパイス」(下北沢)、「シャンティ」(原宿)、「こころ」(渋谷)、「木多郎」
(カレーミュージアム)など、札幌の有名店が続々と進出しています。
 タウン誌などでも、話題になりつつあり、情報ツウの人はご存知かもしれませんね。

 さて、この「スープカレー」ですが、私がブームの火付け人だって知っていました?
 私のカレーのホームページ「札幌激辛カレー批評」で、まだ「スープカレー」という言葉が、
一般的でなかったころから、地道にスープカレー店を紹介していったのが、ブームのきっかけと
なったのです。

 「札幌激辛カレー批評」 http://www.kabasawa.jp/curry/curry_home.html 

 実は、私はカレーの本を二冊出版しています。
 約15000部を売り上げた、「とっておき北海道 カレー50」(絶版)と、
「北海道スープカレー読本」(亜璃西社、1260円)です。 
 http://www.kabasawa.jp/curry/paper/sell/book.htm

 
 「北海道スープカレー読本」は、タイトルからして、単なるスープカレーのお店紹介の本と
思うでしょうが、一味違います。
 「スープカレー」というユニークで新しい料理が、いかにして誕生したのか。
 その歴史。あるいは、文化的な背景についての考察。
 あるいは、スープカレーを生み出した人たちの人物ドキュメント。
 そして、「スープカレー分類」の考案という、目からウロコの食文化の読み物です。

 これを読んだ上で、スープカレーを食べると、何倍も美味しく食べられること受けあい。 
 一緒にスープカレーを食べに行った彼女に、ウンチクを披露すれば、あなたのカブも上がる
でしょう。
 
 もう札幌ラーメンの時代ではありません。
 札幌への出張が多いかたは、この一冊があれば、出張が極楽になるはずです。
 道外の方も、樺沢節が炸裂するこの一冊を、読み物として十分に楽しんでいただけるはずです。
http://www.kabasawa.jp/curry/paper/sell/book.htm

 まあ、私の本の宣伝はいいとして、とりあえず東京の方は、一度食べてみてください。
 私のお薦めは、以下の三店。
 特に、「シャンティ」の「曼荼羅スベシャル」が良いと思います。

「シャンティ」(原宿)  http://www.shanticurry.com/

「カレー食堂 心」(渋谷)   東京都渋谷区桜ヶ丘30−15

「マジック・スパイス」(下北沢) http://www.magicspice.net/

 
 心も身体もあたたまって、風邪を引かずに、年末を乗り切ってください。

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■2  日本で一番早い!!  アメリカ最新映画紹介 (ネタバレなし)
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┌───────────┐
   シャル・ウィ・ダンス           
└───────────┘
 
 言うまでもなく、周防正行監督の「Shall We ダンス?」のハリウッド版リメイクである。
 役所広司役がリチャード・ギア。草刈民代役をジェニファー・ロペスが演じる。
 いかにも・・・という感じだ。

 私は周防作品が大好きで、当然「Shall We ダンス?」も好きである。
 だから、あえてイメージを崩したくないというか、もとの作品が素晴らしいだけに、
リメイクがそれを超えるということもありえないので、見たいとも思わなかった。

 しかしながら、私の家内がどうしても見たいという。
 私は「ナショナル・トレジャー」が公開初日なのでそちらを見たかったのだが、
しかたなく「シャル・ウィ・ダンス」に付き合う。

 いや・・・良かった。本当。
 三箇所くらい泣いてしまった。
 考えてみれば。元の話がいいわけだから、面白いのは当然だ。
 しかし、予想外に完成度が高い。
 
 正直、リチャード・ギアの主人公ってどうよ? と思っていた。
 リチャード・ギアも、最近は「プロフェシー」とかロクなのにしか出ていない。
 「シカゴ」は良かったけど、完全に女優にくわれてしまっているし・・・。
 
 この作品では、彼の無個性ぶりが、役所広司にピッタリとはまる。
 リチャード・ギア、久々の当たり役だ。

 ジェニファー・ロペスもどうよ? と思っていたが、変なオーラを放っていないで、
ちゃんと「普通のダンス教師」の役にはまつていたのは、意外だった。

 一番笑えるのは、渡辺えり子役の女性だ。
 体型やしぐさ、そして声までそっくりなのだ。
 竹中直人役の男性は、いまいちか・・・。
 あまりにも、竹中直人の演技が凄すぎるから、しょうがない。

 基本的に、日本版とストーリーはほとんど同じ。
 リチャード・ギアの家族の話がすこし膨らませてあり、厚みをもたせてあるが、それ以外
はほぼ同じ。
 演出まで、そっくりだ。
 
 監督も出演者も、日本版「Shall We ダンス?」を何度も見て研究したのではないか
と思わせる。 役者の動作とか、表情まで似ていたりするのだから。

 笑わせどころもまた、日本版とほとんど同じだが、観客の笑いの反応は良かった。
 アメリカ人観客も、この作品をかなり楽しんでいた様子である。
 公開から1ヶ月もたつが、館内は半分以上埋まっていて、なかなかの人気である。

 個人的には、舞台がシカゴということで、余計楽しませていただいた。
 「電車=シカゴ」なんだね。アメリカ人のイメージは。
 見慣れた風景がたくさん登場していた。
 
 具体的にどこに感動したのか。
 それは、「精神医学の目」に書かせていただいた。

 いやあ、「シャル・ウィ・ダンス」、本当に見逃さないでよかった。
 「ザ・グラッジ」もそうだが、日本映画のハリウッド・リメイクは、意外と良い。

 お薦めする人
・日本版「Shall We ダンス?」を見た人 (違いが楽しめるので)
・日本版「Shall We ダンス?」を見ていない人
・リチャード・ギアのファン

期待はずれになる人
・ど派手なジェニファー・ロペスが好きな人
 (彼女の個性は、結構控えめ)

樺沢の評価 ★★★★  (★5個が満点)

 

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■3 精神医学の目  (ネタバレなし、見てない人も読んでね)
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┌──────────┐
   シャル・ウィ・ダンス      何かしませんか? 自分が表現できることを・・・
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 アメリカ版「シャル・ウィ・ダンス」も、 日本版「Shall We ダンス?」も、ストーリーは
ほぼ同じ。そして、テーマも同じである。
 この映画のポジティブなテーマを改めて味わってみよう。 

★ 自分を表現できると、イキイキする

 仕事に疲れて帰るだけの毎日。
 実に、つまらない。
 そんな主人公が、ダンスを始めることで、毎日がイキイキとしたものになる。
 表情が明るくなる。そして、毎日がウキウキ気分に・・・。

 ダンスは表現である。

 自分を表現すること。
 
 我々の日常生活の中で、自分を表現するチャンスというのは、意外とないのである。
 本来であれば、「仕事」自体が「自己表現」につながれば一番いいのだろうが、
毎日同じような仕事の繰り返しに、うんざりしている人も多いだろう。

 竹中直人役の男も、渡辺えり子役の女性も、ダンスをしている時が、一番イキイキとして
輝いていた。

 何か、本気で打ち込めることを見つけること。
 そして、それを一生懸命やることで、自分を表現すること。

 そうすれば、何かが変わる。

 我々の日常は、自分という人間を殻の中に押し込めているようなものだ。
 それでいいのか? そんな人生で?

 自分を表現できるとイキイキする。
 あなたは、自分を表現していますか?

★ 何かを「始める」ことの大切さ
 
 私が、この映画の中で一番好きなシーン。
 それは、毎日電車の中から、ダンス教室の看板と窓でたたずむ美人のダンス教師を
眺めるだけだった主人公が、意を決して電車から降りるシーンである。

 降りようかな・・・でも、やめようかな・・・。
 ドアがしまりますとアナウンスが入ってギリギリのところで、主人公は電車を降りる。

 この主人公は、あの日電車から降りて、ダンス教室の入り口をくぐらなければ、
一生退屈な毎日を送っていただろう。

 電車とは人生の象徴である。
 決められレールの上。毎日同じ路線を走る。
 繰り返される退屈な毎日。退屈な日常。

 仕事に追われて、私たちは何か大切なものを忘れているのではないだろうか?
 自分らしさ。本当の自分。

 主人公は電車を降りて、自分探し。本当の自分と向き合う旅に出たのである。

 何か、やりたいなあ、と思っている人はいるだろう。
 
 英会話習いたいなあ、とか。
 心理学でも勉強したいなあ、とか。
 
 でも、思っているだけでは何も変わらない。
 あなたも、役所広司やリチャード・ギアのように、日常という電車から飛び降りな
いと・・・。
 
 まず、「始める」ということが大事。
 
 見ず知らずのダンス教室の門をくぐるというのは、結構決断がいたはず。
 しかし、この主人公は、勢いにのって、それをやってしまう。
 ここのところは、見習いたい。
 
 「やりたい時」が、「始める時」なのである。
 いつからにしようかな・・・とか、頭で考えると、「忙しいからいいや」ということに
なってしまい、結局いつまでたっても始められない。

 まず始めよう。

 あなたのやりたいことを・・・。

★ 「シャル・ウィ・△△△」

 この映画のタイトルは「シャル・ウィ・ダンス」(ダンスしませんか)であるけど、
別にダンスでなくても良いわけだ。
 
 何か打ちこめること。
 何か夢中になれること。
 そして、何か自分が表現できること。

 それを、あなたもやりませんか?
 そういうメッセージである。
 それが、映画のテーマなのだろう。

 草刈民代役のダンス教師は、ダンスの本当の楽しさを忘れてしまっていた。
 大会で優勝することだけにとらわれてしまって、ダンスすること、表現することの楽しさ
を忘れてしまっていた。
 それを思い出させたのが、主人公である。

 大会で失敗しダンスをやめようと思った主人公に、逆に"Shall we dance?"と
張り紙をだして、ダンスに誘う。

 この"Shall we dance?"という誘いは、我々観客に対してのものでもある。
 
 あなたは、自分が夢中になれることを、何かやっていますか?
 自分自身を表現できることを・・・。

 やっていなければ始めましょうよ。
 
 「いつにしようか」なんて考えていないで。
 
 今すぐ、電車を降りましょう。

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 私のアメリカ生活も半年を越えますが、テレビのコメディは全く理解できません。
 このメルマガで、笑いの英語について勉強しています。
 また、発行者が元映画業界の方で、映画の話もときどき載っています。(樺沢)
 
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■4 読者の凄い解読  (多少ストーリーに言及)
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┌───────────┐
    コラテラル             投稿者 ハリネズミさん
└───────────┘ 

 映画が始まって10分、何も起こらなかったことで私は確信しました。
 この映画は間違いなくマイケル・マンの映画だと。
 映画における最初の10分は、観客の心を掴む大事な場所です。
 ほとんどのアクション映画は、ここで見せ場を用意します。
 しかしそれがなかったということは、ハリウッドの法則にのっとらない、マイケル・マンの映画
だということになるのです。
 私はそれに気がついたときゾクゾクとする喜びにつつまれました。
 彼は変わっていなかったと叫びたかったです。
 そしてそれから私は至福の2時間を過ごしました。

 この映画は、冷徹な殺し屋にまきこまれたタクシー運転手が、脅迫されて殺しの手
伝いをさせられる、といったアクションサスペンス映画ではありません。
 いえ、表面上はそうなのですが、マイケル・マン監督の映画の中には2重3重に
テーマが盛り込まれています。それに注意して映画を観なければ、アクションシーンだけ
はおもしろい、というだけの映画になってしまいます。
 それでは私が気が付いた範囲のテーマについて解説します。

 まず、相容れるはずのない二人の間に生まれるかすかな共感を描いています。
 二人がタクシーの中で話しているうちに、だんだん脅すものとされるものの関係が
ゆらいでいます。けっしてセリフで表現されることはありませんが、それはコヨーテが道路
を横切シーンで表現されています。コヨーテが道路を横切るためにわざわざタクシーを
止めるマックスと、それを咎めることなく一緒にみつめるヴィンセント。
 このシーンは余裕のないはずの二人に、わずかな余裕ができたことを表しています。
 そしてそれは二人の間にかすかな信頼関係ができたことを表しているのです。
 そしてこの関係があるからこそ、ラストでの二人の対決がよりクローズアップされ
るのです。

 次にマックスという男の成長物語として観る事もできます。オープニングのタク
シーのシーンは、ヒロインとの出会いのシーンだけと思われるかも知れませんが、
あそこでマックスは重要なことを語っています。
 高級リムジンのハイヤーの会社を作る計画についてです。また、このシーンではわざ
わざ戻ってきたヒロインから名刺をもらったのも重要な事です。
 それはラスト付近で電話をかけるためではありません。
 マックスはこの計画についてヴィンセントには、ビジネスの話だから秘密だといい
ます。ヴィンセントはそれに対して「男は黙って動くものだ」といいます。
 これは、ヴィンセントの性格を顕著に表していて、彼は考える前に動くことでなに
かをかな得ることができると考えています。

 計画を教えなかったマックスですが、それを母親にばらされてしまいます。
 この後マックスはヴィンセントに反抗をする訳ですが、それでもヴィンセントは
マックスを殺しません。これはマックスに利用価値があったのも確かですが、この時点で
ヴィンセントはマックスの性格を見抜いていたからです。つまり、現状に不満を持っ
ていても夢ばかり見ていて、決してそれを実行しない男だと見抜いていたのです。
 そして強制すればそれが不満でも付いてくる男だと確信したのでしょう。
 また、ヴィンセントが名刺の女に電話しろ言った時に、マックスがあいあまいな返事
をしたこにもマックスの性格は表れています。つまりマックスは口だけ男なのです。

 しかし後半でヴィンセントにそれを指摘されたことで、自分が口だけで今まで何も
してこなかったことに気が付きます。
 そして「失うものは何もない」という言葉につながるのです。これはストーリーの
核となるシーンです。
 なぜならヴィンセントは、マックスの欠点を指摘することでマックスを成長させた
のです。
 成長とは、ヴィンセントにただ従う人間から、ヴィンセントに反抗する人間になる
ということです。
 このシーンで人間的に成長したマックスはこれ以後、一人前の男としてヴィンセン
トと対等の立場で戦うことになるのです。

 最後に、この映画はロサンゼルスという町を凝縮させて表現しています。
 ヴィンセントが言う「隣人に無関係な人々」これはセリフだけでなくて実際に表現
されています。助けを求めるマックスを気にも止めない人々、ディスコのすぐ近くで人が
倒れても踊りつづける人々、電車の中で背景のように動かない乗客達。
 これはロサンゼルスの今を表しています。

 また監督はヴィンセントの言葉を借りてロサンゼルスの人々に警鐘を鳴らしています。
 60億人のうちの1人、ルワンダ難民の話、などなどヴィンセントが語る言葉は、
町に飲み込まれて無関心になるなというメッセージの裏返しだと思います。
 またラストにヴィンセントが電車で死んだ男の話をし、一人になることを望んだの
には意味があります。
 それは現実のロサンゼルスへの挑戦状なのです。
 死んだまま6時間電車に放置された男の話からの隠喩で、俺はこれから何時間放置
されるのかと、観客に問うているのです。

 ここまで色々と書いてきましたが、どう思われたでしょうか、こじつけだと思われ
たでしょうか。
 実は、私の意見はどう思われてもかまわないのです。マイケル・マン監督の映画が
ただ一方から観るだけでなく、いろいろな視点から見ることができる映画だとわかっ
てもらえるだけで、私にとっては最高のことなのですから。

この解読がおもしろいと思った人は、ハリネズミさんのサイトをのぞいて見ましょう。
 こちら↓↓
http://harinezmi.ameblo.jp/

「新作映画をとにかく観て紹介する人柱的ブログ」

[樺沢コメント]
 映画は、一本で存在するのではありません。
 監督は、いろいろな作品を監督してきて、その延長線上に、新作があるわけです。
 つまり、映画をより深く楽しむためには、監督の作家性。
 その監督の特徴や、今までの作品の傾向などを知っていることが大切です。

 この解読は、マイケル・マン監督の作家性をふまえた上で、きちんと考察されています。
 みなさんも、たくさん映画を観て、その監督の傾向をとらえましょう。
 映画が、より楽しくなります。

 あなたも「読者の凄い解読」に投稿しませんか?
 あまり投稿がないので、今は狙い目です。
 投稿規程は、コチラ↓↓↓
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 映画の見方は、人それぞれです。このメルマガは、発行者の個人的な見解であり、
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 みなさんから、お送りいただいメールは、メルマガ、ホームページ上で紹介するか
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     シカゴ発 映画の精神医学

  ●第1号●   2004年7月23日発行                
                
    発行者     樺沢紫苑 
  発行元サイト: http://www.kabasawa.jp/
   
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    【 目 次 】
■1 はじめに
■2 今週の映画紹介(ネタバレなし) 「キング・アーサー」 
■3 今週の映画分析  「スパイダーマン2」  スパイダーマンはキリストだった
■4 精神医学の目    「スパイダーマン2」  ピーターの精神医学的診断は?
■5 映画をもっと面白く見る方法(ネタバレなし)  映画をたくさん見よう その1
 
※注意 「ネタバレなし」の記載のない項目は、映画の詳しいストーリーや結末につ
いて書かれています。映画を未見の方は、ご注意ください。
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■1 はじめに

 はじめまして。 「シカゴ発 映画の精神医学」へのご登録ありがとうございます。
 発行人の樺沢紫苑と申します。北海道の方はご存知かと思いますが、全国の方はお
初にお目にかかる方が多いと思います。
 さて、カレーの食べ歩きサイト「札幌激辛カレー批評」やスターウォーズ研究サイ
ト「ホス・プレス」など、ホームページは5年以上やっていますが、メルマガは今回
が初めてとなります。
 
 メルマガをはじめた理由はいくつかあります。 
 今年の4月からアメリカのシカゴに来ていますが、日本にいる時もよりも時間の余
裕ができ、週2本くらい映画を見られる環境になった、ということ。
 そして一番の動機は、映画の掲示板などでいろいろな人の感想を読んでいて、あま
りにも否定的な意見が多かったり、映画を曲解している人が多いことです。アメリカ
映画というのは、アメリカ文化をある程度理解していないとわかりずらい部分があります。
 しかし、誰もそうした溝を埋めるべく適切なコメントを与えないために、映画自体
が死んでしまっている。
 これは、非常に悲しいことです。
「映画はもっとおもしろい」をキーワードに、いろいろな情報を提供していきます。
 もちろん、本業の精神科医の知識と経験を生かして、精神科医にしかできない考察
もありますので、お楽しみに。

 私と一緒に、人間の心理、そしてアメリカの文化や歴史を勉強しましょう。
 映画がおもしろくなるだけでなく、あなたの生き方にもプラスになるはずです。
 
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■1 今週の映画紹介 (ネタバレなし)
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    キング・アーサー           7月24日公開
└───────────┘
 
 映画を見る前には、できるだけ期待しすぎないように注意しているのだが、この手
の群集ものスペクタクルには目がないもので、ちょっと期待しすぎた感がある。
 前半の描写が地味すぎる。演出が暗い。セリフばかりだし、映像に工夫がないし、
淡々と進むし、眠気をこらえるのが大変だった。
 中盤からは、少しずつ勢いづいてきて、盛り上がっていく。
 ラストの決戦シーンに限れば、なかなか迫力はある。でも、もっと、もっと盛り上
げられるのではないかという気がしてならない。

 大規模な戦闘シーンとしては、「トロイ」に軍配。
 ただし「トロイ」と大きく異なるのは、CGをほとんど使っていないこと。実物大の
巨大な砦のセットを組んだり、実際に矢を放ったりと、CGに依存しないで頑張ろうと
いう姿勢は評価したい。
 あと、グウィネヴィア役のキーナ・ナイトレイがちっとも魅力的でない。女戦士と
しては、はまっているけど、彼女とは恋に落ちたくない・・・(私は)。

 一番辛いのは、アーサー王の伝説を全く知らない人が見ておもしろいかどうか? 
ということだ。私も、アーサー王伝説には、さほど知識が深くない、一人であったが
・・・。
 アーサー王が画面に出たとき、「この、アーサー王はちょっとイメージと違うな
あ」と言えるぐらいの人は、かなりおもしろく見られるだろう。
 
 冒頭の状況説明だけでは、この映画の時代背景について十分理解できない。それ
は、日本人にとってという意味で。欧米人にとっては、この辺の歴史は、周知の事実
だから、「欧米人の常識」ということで説明は省略されているのである。
 しかし、多少は歴史的背景を知っていないと、人物にも感情移入しづらい。
 逆に、アーサー王に興味がある人や、アーサー王に詳しい人が見れば、独創的な
アーサー王伝説の解釈に、いろいろとおもしろみを見出すこともできるだろう。

 全体の雰囲気からして、娯楽映画というよりは、歴史映画という感じなのだ。
 正確に言えば、想像の歴史映画だ。
 歴史映画という視点では、いろいろと議論すべき興味深い点も多いのだが、夏休み
映画として「とっても楽しい娯楽映画を見て、ハッピーになりたい♪」という人に
は、向かないだろう。
 とはいっても、次回の「今週の映画分析」は、「キング・アーサー」をマニアック
に語ります。

是非見て欲しい人
・アーサー王について興味がある人。
・アーサー王伝説にいて、簡単にでも内容を知っている人
・地味な映画が好きな人
・CGに頼らない、群集シーンが見たいという人
・クライヴ・オーエンのファン
・強い女性が好きな人

期待はずれになる人
・「アーサー王って誰?」という人
・大がかりな史劇スペクタクル、アクション映画が好きな人
・高校で、日本史を選択した人(世界史を選択しなかった人)
・派手な映画が好きな人

 樺沢の評価 ★★1/2  (★5個が満点)

◇◇「キング・アーサー」のアメリカ事情◇◇

 アメリカ人の反応はクールだ。公開初日の金曜の夜に見た。人気映画であれば、行
列が出来るはずだ。実際、「トロイ」も公開初日の金曜の夜に見たのだが、2時間先
の上映時間(30分おきの上映なのに)まで完売して、さらに行列が出来ていた。
 そんなこともあって、「キング・アーサー」の時は、上映開始45分前に劇場に来た。
 場内に入って驚いた。客が二人しかいなかった。

 結局、上映開始時間には、満員に近い客の入りとなったが、客の食いつき具合が違
う。だいたい、映画館自体があまり「キング・アーサー」に力を入れていない。
 「キング・アーサー」と同日公開したコメディ映画「アンカーマン」の方が、上映
回数が2倍以上も多いのだ。

 映画館に行く前に書店に行ったが、「アーサー王伝説」のコーナーはなかった。
「トロイ」の時は、ホーマーの叙事詩「イリアス」が平台に山積みされていたの
に…。
 だいたい、アメリカ人はイギリスの歴史などには全く興味がないのだろうし、
「アーサー王と円卓の騎士」の伝説自体に、好奇心をそそられないかもしれない。

◇◇これから、「キング・アーサー」を見ようと思う人へ◇◇

 紀元400年頃のイギリスの状況やアーサー王伝説について、多少予習しておくと、
より映画がおもしろく見れます。
 以下、お薦めサイトです。 

「アーサー王伝説とケルト伝説」
http://www.chitanet.or.jp/users/10010382/Index.html-ssi

 特に、以下の知識については、知っておいた方が良いでしょう。

サクソン人
 アングロ・サクソン人と同じ。
 「アングロ・サクソン人は、5世紀ごろ、現在のオランダ付近よりグレートブリテ
ン島に侵入してきたアングル人、ジュート人、サクソン人のゲルマン民族の3つの部
族の総称である。この中でサクソン人がイングランドの基礎を築いたため、アングロ
・サクソン人を単にサクソン人と呼ぶことも多い」

ブリテン人
 ケルト人と同じ。ケルト人は、「もともと先史時代のヨーロッパに広く住んでいた
が、ローマ人やゲルマン人に圧迫されて西方に移動した。 現在その子孫は、アイル
ランドやフランスのブルターニュ地方、イギリスのウェールズ地方やスコットランド
に住む」
http://ja.wikipedia.org/wiki/
(以上「ウィキペディア」より引用)

 ちょっとした知識ではあるが、これを知って映画を見るのと知らないで見るのと
は、印象は相当変わるだろう。
 アーサー王について知っていればいるほど、「キング・アーサー」はより楽しめる。
 間違いない♪(長井秀和調で)。

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■2 今週の映画分析
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   スパイダーマン2       ◇◇スパイダーマンはキリストだった◇◇ 
└──────────┘

<パイロット版に大幅加筆しています>

 「スパイダーマン2」が、コメディ映画だったとは知らなかった。普通のコメディ
映画より、よっぽど笑ってしまった。
 映像的にも迫力があるし、主人公ピーター・パーカーの切実な葛藤は良く伝わっ
た。
 エンターテイメント性も十分で、夏休み映画としてはお勧めの作品である。

 「スパイダーマン2」には、いろいろな映画のパロディ(あるいは引用)が入ってい
て、映画ファンには非常に楽しい。
 ビルとビルの谷間を走って飛び超えようとするが、届かずに落下するシーン。これ
は、「マトリックス」のパロディである。「飛べるはずない」という常識に支配され
て、「飛べる自分」を信じられなかったネオ(キアヌ・リーブス)は、同様に地面に落
下した。今では、「マトリックス」よりも、窪塚洋介君の顔が浮かぶかもしれません
が・・・。
 自動車が飛んでくるところを、間一髪でかわすところ。これも、敵の攻撃や銃弾を
ギリギリのところで見切ってかわす、ネオにそっくりだ。

 序盤のピーターのドジぶり。間の悪さ。ダメ人間ぶりは、人間界でのハリー・ポッ
ターを思い出す。本当はすごいヒーローなのだが、普段の人間としての日常生活は、
全くのダメ夫くんという点が、共通している。
 ドク・オクの登場シーン。まず、ズシン、ズシンという足音と地響きが先行し、本
人が正体を現す。これは、「ジュラシック・パーク」あるいは、「ゴジラ」のパロ
ディだろう。

 一番笑えるのは、ドク・オクが手術室で、医者や看護婦を殺しまくるシーン。この
シーンだけカット割りや映像のトーンが明らかに異なるが、これはサム・ライミの自
らの出世作「死霊のはらわた」、そのまんまである。引きずられるのを爪を立てて防
ごうとするところ。チェンソーを使って反撃するところなど、全く同じである。

 しかし、この映画の中で、最も重要なパロディを見逃してはいけない。ダスティン
・ホフマン主演の「卒業」(1967年)だ。
 大学の卒業を控え複雑な気分の主人公ベンは、エレーンに思いを寄せる。いろいろ
な障壁があって、ベンとエレーンは引かれあいながらも、エレーンは別な男と結婚す
ることになる。エレーンへの思いを捨てられないベンは、結婚式をしている教会へと
乗り込みエレーンを連れ去る。
 このクライマックスのシーンは、あまりにも有名。

 ピーターとMJ、二人は引かれあいながらも、思いをうまく伝えられない。
 スパイダーマンの活動のせいもあり、二人の溝は広がっていく。
 そして、MJは結婚することになる。
 ピーターがMJを結婚式場から連れ去るシーンはさすがにパクらなかったが、ウェ
ディングドレス姿のMJとピーターが抱き合うシーンは、「卒業」そっくりだ。

 映画中盤の、ピーターがスパイダーマンを辞めることを決めた直後、眼鏡をかけ
て、ホットドッグを買い、街を闊歩してストップモーションで終わるシーン。これは
音楽、撮影の仕方などが、「卒業」を含めた60年代後半から70年代に流行ったアメリ
カン・ニューシネマのパロディとなっている。

 「そんなこと、わざわざ指摘されなくてもわかるよ」と映画マニアからは言われそ
うだ。
 では、「スパイダーマン2」のピーターの生き方に、イエス・キリストがオーバー
ラップして描かれていたことには気付いただろうか?
 
 一番象徴的なシーンから指摘しよう。暴走する電車を止めようと、糸を左右に伸ば
す。両側から強力な力で引っ張られたピーターは、電車の前面に磔(はりつけ)になる
(キリストの磔刑)。苦悶の表情を浮かべ、瀕死のダメージを受ける。丁度、体型も十
字架状であるし、「電車の人々を助けるために自らが犠牲となる」、というその精神
もキリストに通じる。

 意識不明となって死んだような状態となったピーターを助け起こす
(キリスト降架)。
 しかし、死んだと思われたピーターは息を吹き返す(キリストの復活)。
 畏敬の念でピーターを見つめる乗客たち。
 電車に乗った人々は、スパイダーマンの自己犠牲精神に心を打たれ、自らドク・オ
クの前に立ちはだかり、スパイダーマンを守ろうと、自己犠牲精神を発揮する(キリ
スト教精神)。

 その次のシーンでは、鉄条網のようなもので縛られたスパイダーマンを、ドク・オ
クがハリーのもとに運ぶ。鉄条網のように見えるが、これはキリストの頭に載せられ
ていた「イバラ」にそっくりである。

 考えてみれば、この「スパイターマン2」の全てが、キリストの生き方をなぞらえ
ている。
 ピーターは、自分がスパイターマンになってしまったという運命(天命)に疑問を抱
き、スパイダーマンを続けて行くかどうか迷い悩む。悩んだ結果、スパイダーマンと
いう運命を受け入れることを決める。
 自らが救世主として選ばれた運命に、悩み苦しみながらも、最後にはそれを受け入
れて、十字架にかけられ、自らの運命を受け入れたキリストと同じである。
 
 ヒーローに救世主のイメージが重ねられるというのは、「マトリックス」「Xメン」
「ロボコップ」その他多くの映画に見られる。この映画がアメリカ人に受け入れ
られやすい一つの理由を、こんな聖書がらみの描写にも見出すことができる。 

<以下追加>
 「スパダーマン=キリスト」という視点で、「スパイターマン2」を見れば、もっ
とおもしろい発見ができるだろう。
 すなわち、「ドク・オク=パウロ」で、「MJ=マグタラのマリア」、「ハリー=ユ
ダ」である。
 
 ユダヤ教のラビであったパウロは、キリスト教弾圧の先導者であった。
 しかし、復活したイエスと出会い、心を打たれた彼は回心する。
 その後パウロは、数々の弾圧と戦いながら自己犠牲をいとわずキリスト教普及に邁
進する。
 スパイダーマンを恨み、スパイダーマンを攻撃するドク・オク。
 しかし、復活したスパイダーマンの説得に、自らの科学者としての初心を思い出
し、回心する。自らが犠牲となって装置を破壊するのだ(キリスト教的自己犠牲精神
の実践)。
 
 これだけなら、「偶然でしょう」と一蹴される。しかし、パウロ回心の場面では、
パウロは天からのイエスの声を聞く。
 ドク・オクがスパイダーマンを発見した時、スパイダーマンは天井にはりついてい
た。
 まさに、ドク・オクはスパイダーマンの天の声を聞くのだ。

 MJは、「Mary Jane」の略。「Mary」の語源は、「マリア」である。この場合は、
聖母マリアではなく、イエスの恋人説もささやかれる、マグダラのマリアということ
になろう。
 
 ピーターのかけがえのない親友の一人であるハリー。
 しかし、その最も親しい親友が、次作ではピーターを裏切って、スパイダーマンに
襲いかかる(多分)。
 キリストの使徒であったユダ。しかし、ユダはキリストを裏切り、ユダヤの祭司長
へ、イエスの居場所を教え、イエスを引き渡すこととなる。
 
 以下の「スパイダーマンはキリストだった」樺沢サイト補足ページでは、画像入り
でわかりやすく説明してありますので、参考にしてください。
http://www.kabasawa.jp/eiga/page/spideman2_hosoku.htm
<追加分終了>

 前作スパイダーマンは、アクションヒーローものであったが、今回はサム・ライミ
の遊びの部分がとっても増えている。二作目のジンクスというのがあって、一作目で
大ヒットした映画は、二作目では一作目をしのげないというものだ。
 「ターミネーター2」「エイリアン2」といった作品は、第一作とかなり趣を変える
ことで、「二作目のジンクス」を打ち破ることのできた、数少ない映画である。

 この「スパイダーマン2」はどうであろうか? あまりのお遊びについていけない
という人もいるかもしれないが、前述のような映画ファンを楽しませる趣向や、キリ
スト教的な描写を加えることで、前作の単なるヒーローアクション映画よりも、奥深
い映画に仕上がっているように思える。個人的には、この二作目の方が好きだ。
 ただ、前作の興行収入が半端じゃないだけに、それを超えるの難しい気もする。
 
 アメリカでの反応だが、「バーガー・キング」でスパイダーマンがらみのフェアを
やっていたり、スーパーのシリアルやお菓子などで、スパイダーマンのグッズ付きの
ものが売られたり、書店でスパイダーマンのコミックス並べられていたりと、結構、
街の中でもスパイダーマン関係のものを見かける機会は多い。
 スパイダーマンは、アメリカ人のヒーローなのだな、と実感する。 

「スパイダーマン」DVD
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00024Z5NG/hothpress-22
「卒業」DVD
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005HARH/hothpress-22
「死霊のはらわた」DVD
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00009XMN3/hothpress-22

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■3 精神医学の目
──────────────────────────────────
┌───────────┐
     スパイダーマン2       ◇◇ピーターの精神医学的診断は?◇◇
└───────────┘
 
 スパイダーマンの重責が、ピーターの肩に重くのしかかる。
 スパイダーマンのお仕事に時間をとられてしまい、アルバイトや学校、そして一番
楽しみにしていたMJの舞台にまで遅刻してしまう。さらには、ぼやーっとしたり、注
意散漫になったり。スパイダーマンとして、糸が出なくなったり、壁に張り付く能力
まで低下してしまい、実際に目がぼやけるなどの身体症状も出現する。
 体調不良を自覚したピーターは、病院にかかるが、そこでは精神的なものが原因で
あると言われてしまう。

 さて、精神医学的にみて、ピーターの診断は何だったのだろう?
 結果から言えばうつ病ということになるが、「だいたいもうつ病の症状って、どん
なの?」と、疑問に思う人も多いはず。

 以下、精神科のドクターが日常的に使用している、DSM-4という診断基準から、大
うつ病の診断基準というのを抜粋する。

--------------------------------------------------------------------
 以下の症状のうち5つ以上が同じ2週間の間に存在し、病前の機能からの変化を起こ
している;これらの症状のうち1つは、1.抑うつ気分または2.興味または喜びの喪失
である。
(1) ほとんど1日中、ほとんど毎日の抑うつ気分
(2) ほとんど1日中、ほとんど毎日の、すべて、またはほとんどすべての活動におけ
る興味、喜びの著しい減退
(3) 著しい体重減少、あるいは体重増加、またはほとんど毎日の、食欲の減退または増加
(4) ほとんど毎日の不眠または睡眠過多
(5) ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止
(6) ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
(7) ほとんど毎日の無価値感、または過剰であるか不適切な罪責感
(8) 思考力や集中力の減退、または、決断困難がほとんど毎日認められる
(9) 死についての反復思考、特別な計画はないが反復的な自殺念慮、自殺企図、
または自殺するためのはっきりとした計画
-------------------------------------------------------------------- 
 
 他の項目も続きますが、詳しく知りたい人は下記のページなどを参考にしてくださ
い。
http://www.depression-webworld.com/japanese/dsm-ivndx.htm

 簡単に要約すれば、上記の「1」と「2」のどちらかが必須症状で、上記9症状のう
ち5個を満たせば、大うつ病と診断されるわけだ。
 
 さて、これを「スパイダーマン2」のピーターに当てはめてみよう。
(1) 気分の落ち込み、陰鬱な気分(抑うつ気分)は、彼の暗い表情、さえない表情から
みて、存在していただろう。
(2) ピーターには毎日が楽しいという実感がない。スパイダーマンとしての業務こな
しても、充実感はないし、むしろ義務、お荷物のようになっている。MJに対する恋愛
感情を持つ余裕があるので、重度ではないが「興味・喜びの喪失」を認める。
(3)隣室の女の子が作ってくれた料理を完食していたので、「食欲低下」はなさそう
である。
(4)学校への遅刻も多いということは、「スパイダーマンの業務が忙しい」という意
味でもあるが、「実際に睡眠時間を十分にとれている」ということはなさそうだ。
ぼやっとした表情からも、睡眠障害はあったと考えられる。 
(5)焦燥、イライラなどはなかったようだ。「制止」というのは、考えが進まない。
考えが止まってしまうということ。冒頭のMJの看板を見ていて、考えがとまってしま
うというのは、「制止」と言えるかどうか、微妙なところ。
(6)今までは、毎日ハードなスパイダーマンの業務をこなせていた。それが出来なく
なってのは、体力低下、すなわち易疲労性などがあったためと考えられる。
(7)彼の心の中には、「なぜ自分だけがスパイダーマンになってしまったのか? な
ぜ、自分だけがこんなことを続けなくてはいけないのか」という気持ちが、あったは
ずだ。あるいは、「こんなことを続けていて、意味があるのか」という懐疑。自責
感、無価値感は明らかに認められた。
(8)ピーターの最も顕著な症状だ。彼の数々の不注意とミスは、集中力低下、注意力
の低下に起因している。
(9)死にたい気持ちはなかっただろう。

 さて、9症状中(3)(5)(9)以外の6症状は、存在していたと考えて良いだろう。。
 さらに精神医学的は、適応障害(はっきりとした精神的ストレスによる障害)を除外
しないといけない。ピーターのスパイダーマン稼業は、かなり以前から続いており、
スパイダーマンの重責というストレスは、ここ6ヶ月以内に始まったわけではなく、
適応障害にはあたらない。
 ということで、ピーターは大うつ病と診断される。
 
 さて、上記のうつ病診断の症状には含まれていないが、うつ病の初期症状として重
要なものがある。それは、「種々の身体症状」だ。軽症のうつ病では、精神症
状は軽く、身体症状が中心に現れてくるので注意が必要である。一般的には、不眠、
食欲低下を筆頭に、易疲労感、倦怠感、頭痛、肩こりなどの症状が多くみられる。
「最近体力がなくなった」「最近無理が効かなくなった」というのも、うつ病による
体力低下のためと考えられる。

 ピーターの、スパイダーマンとして糸が出ない。壁に張り付く能力の低下。跳躍力
の低下などは、そうした身体機能、体力の低下と考えられる。
 そして、「視力障害、調節障害」は、実際にうつ病の患者さんにもときどきある症
状だ。ピーターが病院に行ったのは、「視力障害」が出て、いよいよ困ったからであ
る。

 精神症状だけでは精神科の病院にはなかなかかかりずらいもので、実際の患者さん
も身体症状が出て内科の病院を受診し、そこから精神科の病院を受診する場合が多
い。
 他にも、「最近、遅刻や早退が多くなった」とか「今のままやっていく自信がな
い」というのも、うつ病の症状としてよく認められる。

 さて、このようにうつ病の症状について詳しく説明した。
 その理由は、「皆さんも、うつ病には注意してください」ということだ。
 うつ病というのは、自分から気付かないことが多い。身体症状が出たり、精神症状
が重くなってようやく気が付く。しかし、早く気付いて、早く精神科を受診した方
が、より早く治る。

 ピーターの不注意なミスは、笑いごとでは済まされない。社会人のうつ病の初期
症状の一つとして、「最近、仕事のミスが増えてきた」ということが、大変多い。
 もともと、頑張りやの人が、突然ピーターのようなダメ夫君に変わった場合は、う
つ病も考えなくてはいけないわけだ。
 
 アメリカの大規模な調査では、「一生に一度でも大うつ病を経験したことのある人
は全体の 16.2 % にのぼり、ここ1 年間に絞ってみてみると 6.6 % 」だという。
http://www.depression-webworld.com/japanese/news52ndx.htm
 約15人に一人が、ここ1年間でうつ病になっていたということだ。
 全く、人ごとではない。

 さて、「俺はいろいろ悩み事も多いがうつ病なんかにはならないぞ!!」と思う人も
多いだろう。実は、いろいろとストレスがかかっても、うつ病になりやすい人とそう
でない人がいるのである。
 そして、「スパイダーマン2」のピーターは、実はうつ病になりやすい典型的な性
格傾向だったのだ。 (次回に続く) 

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■4 映画をもっと面白く見る方法   (ネタバレなし)
──────────────────────────────────
┌─────────────────────┐
 映画はたくさん見ればみるほど、よりおもしろくなる    その1     
└─────────────────────┘

 淀川長治という偉大な映画評論家がいた。
 「サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ」のおじさんである。
 大学生の頃は、正直言って淀川さんが大嫌いだった。
 「なんでこの人は、どの映画も誉めるのか? 映画会社の回し者か?」
 しかし、私も40歳近くになり、多くの映画を見て、少しだけ淀川さんの心境を理解
するに至った。

 どんな映画でも、見所やおもしろさがあること。そしてそれは、多くの映画を見な
いと、気付きづらいということである。

 上記の「スパイダーマン2」の批評を読まれたと思う。
 あなたは「マトリックス」「ハリー・ポッター 賢者の石」「死霊のはらわた」
「卒業」のうち、何本見ているだろうか?

 ここで質問である。これらの作品を一本も見ていない人と、四作品全て見ている
人では、どちらが「スパイダーマン2」を楽しめるだろうか? 

 もちろん、答えは四作品見た人だろう。。
 基本的なおもしろさは変わらないとしても、四作品見た人は、その分だけパロディ
に気付いて、付加的なおもしろさを楽しむことができたはずだ。
 こうした、他の映画のパロディなり、オマージュなり、引用というのは、あらゆる
映画に無数に存在する。そうしたものが、たくさん映画を見ることで、どんどんわか
るようになって来る。

 したがって、少ししか映画を見ない人よりも、多く映画を見ている人の方が、一本
の映画を見るに当たって、より作品を楽しんでいると、言えるだろう。  (続く)

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■5 編集後記
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 さて、こんな長いメルマガを作ってしまって大丈夫だろうか?
 二、三回発行して終わるとか・・・そんなことはあり得ません。
 まだまだ、私のふところは深いのでご安心ください。
 ネタは、無数にありますから。

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