インランド・エンパイアの解読 第1章
「インランド・エンパイア」とは

「リンチの最高傑作」という評価もあるように、評判は非常によいのではないでしょうか。
この映画の製作形態は、かなり特殊なものです。リンチ監督の頭の中には、「インランド・エンパイア」のおおよそのコンセプトはあったようですが、まとまった脚本というのは無く、監督が毎朝各役者に数ページの書きたての台本を渡していたといいます。
リンチ監督自身が、製作中のインタビューで「この映画の全体がどの様に明らかになるのかは私にも分からない」と述べているほどです。
撮影中は、リンチが好きな時に俳優を呼んで自分でカメラをまわしその断片を繋げていくという製作方法だったため、製作期間は2年半にも及びます。そのため製作会社が資金提供を渋り、結果的にほぼ自主制作映画のような形になりました。
この自由きままな撮影方法を見ればわかるように、リンチ監督が「好きなように好きな映画を撮った」というところが、「インランド・エンパイア」の重要なポイントだと思います。
リンチ監督の頭の中。リンチ監督のイメージの世界を我々が散歩しているような感覚。そこは迷宮のように入り組んでいるものの、リンチのイメージ世界というゆるぎない共通性を持っていて、「一つの世界」として完成されています。
「インランド・エンパイア」、「内なる帝国」。 これには、少なくとも四つの意味が重ねあわされています。
一つ目は、南カリフォルニア州にある実在の地名「インランド・エンパイア」。インランド・エンパイアの風景は、映画内でも使われています。
二つ目は、主人公ローラ・ダーン演じるニッキー・グレイスの内面世界。
そして、三つ目が、リンチ監督のイメージ世界ということではないでしょうか。
映画「インランド・エンパイア」を観るということは、リンチ監督のイメージ世界を散歩するということ。そう考えれば、「インランド・エンパイア」は、それほど難解な映画ではない、と思えてきませんか?
あっ、「インランド・エンパイア」の四つ目の意味ですか?
これは、第2章で、明らかにしたいと思います。
この続きは、コチラからお読みください。